2月1日
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1月31日、時刻は亥の上刻をまわり、日付が変わるまではあと1時間も残っていなかった。
今私がいるのは、朽木家の…白哉様の私室。
さすがは朽木家当主の誕生日だということはある。
隊務が終わり、今日は非番だった白哉様のもとへやって来た時からずっと、屋敷内はたくさんの来客で賑わっていた。
私は白哉様に逢えないままここに通され、そのざわめきを遠くに聞いているだけだったけれど。
しかしそんな屋敷内も、この時刻に近付きかなり静けさを取り戻しつつあった。
縁側の障子戸を開けて月を見上げると、小さく吐き出した息が白く色づき流れていく。
私は懐から小さな包みを取り出した。
それは白哉様へのプレゼントで、桜の花を模して作られた、美しい桜色の根付け。
もちろんそのまま根付けとしても使えそうだし、白哉様の斬魄刀『千本桜』なら刀の柄あたりに付けても似合いそうな代物だった。
月の光を集めて淡く光るそれは、何故か凛とした白哉様の雰囲気に似合っている気がした。
私はそれを丁寧に包み直し懐にしまうと、もう一度月を見上げてぼんやりと考えた。
白哉様と付き合い始めて初めての誕生日…こうなることは分かりきっていた。
けれど、白哉様は私をとても大事にしてくれる。
それは疑いようのない事実だったから…私にはそれだけで充分だった。
ただひとつだけ欲を言えば、1月31日の間に白哉様にお祝いの言葉を言いたかったな、と思う。
だけどそんなことを考える自分に対し、何ぜいたく言ってるの、と知らず苦笑いが漏れる。
「…さむ」
すり合わせた両手に白い息を吐きかけた時、月の光が翳った。
雲が出たのかと振り返ったそこには…白哉様の姿。
その瞬間、寒さも、今の時刻も、今日のうちにお祝いを言いたいと思ったことも、何もかもがどうでもよくなった。
ただ、白哉様に逢えたことが嬉しかった。
「白哉様…」
「遅くなってすまぬ」
月を背中にしているから表情はよく見えないけど、その声は心なしか疲れているように聞こえた。
けれどそれは仕方のないことで…私はここにこうしていることがとても申し訳なく思えた。
「こんな寒い部屋で待たせてすまなかった。今、羽織るものを…」
なのに白哉様は、私の為に動いてくれようとする。
「あ、あの白哉様…私なんかにそんな気を遣わないで下さい…」
私がそう言うと、立ち止まり振り返った白哉様は驚いた様子で私を見た後、目を伏せ小さくため息を吐いた。
自分の隊長羽織を脱ぎながら、私の方へ戻ってくる。
そして白哉様は、その羽織をふわりと私にかけてくれた。
「可那子…そなたは、私の恋人ではないのか?」
真っ直ぐに見つめられ、問われる。
「白哉様…」
「私は、私がそなたにしてやりたいと思ったことをしているだけだ。気など遣っておらぬ」
言いながら、その温かな両手で私の手を包み込んでくれた。
「こんなに冷たい手をして…」
白哉様の優しさは、手だけではなく心まで温めてくれる。
そんな幸せに浸っていると、
「体も冷え切っているではないか」
白哉様は私を抱き寄せ…
「白哉様…っ!?」
「私の責任だからな。私が温めてやる」
私の体を抱え、立ち上がった。
「それに、今日は私の誕生日なのだ。欲しいものをもらっても罰は当たらぬだろう」
そう言った白哉様の腕に、少し力が込められたのを感じた。
白哉様が私を求めてくれたことが嬉しくて。
私は結局、用意してきたプレゼントを渡すどころか、お祝いの言葉を伝えるタイミングすら失ってしまっていたのだった。
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