④
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やわらかな風が時折、可那子の髪を巻き上げて通り過ぎていく。
顔にかかる髪とスカートの裾を気にしながら可那子は、ヘリポートにもなっている屋上から黄昏の街を眺めていた。
ヘリの発着がない時というのを条件に来ることを許された日から可那子は、一八のいない日にはよくここに来るようになっていた。
その時、にわかに強い風が吹き抜けた。
その風の音に混じって、バサリ、大きな鳥を思わせる羽音が耳に届く。
首を巡らせると、大きな塊が目に飛び込んできた。
「一八…さん…?」
一度だけ、それも薄れゆく意識の中で見ただけの姿だったが、それは確かにデビル化した一八に間違いなかった。
直後、滅紫の体の背で羽を震わせた一八はガクリと膝をついた。
はっきりとは見えないが…その表情は苦しげに歪んでいるようだった。
「一八さんっ」
「寄るな!――…いや、」
駆け寄ろうとする可那子を一八は鋭く制した。
が、ふと何か思い直したように立ち上がる。
「来い」
一八の制止に驚いて足を止めたままだった可那子に歩み寄った一八は、その腕を掴んだ。
直後いつもより強い力で引き寄せられた可那子は、ひやりとして硬いデビルの胸に抱きしめられていた。
「一八さ…」
「何者であっても…俺だと言ったな」
呼びかけた声を遮られ問いかけられた言葉にはっとして顔を上げた可那子は、
「やはり俺が恐ろしいか」
「…!」
続いた言葉に驚き、戸惑い、慌てて首を振った。
「いいえ…!恐ろしくなんか、」
「そうか」
答えを最後まで言わないうちに、紅い瞳がゆらりと揺れた。
重なる唇、滑り込む舌。
「…っ、ん…、は、ぁ…」
時折ぶつかる犬歯以外いつもと変わらないデビルのキスは、いつもと変わらず可那子の体に熱を持たせる一八のキスだった。
デビルの姿をしているだけ。
そう、ただそれだけのはずなのに。
何故か可那子の中には、正体の分からない小さな不安がくすぶったままだった。
一八がそれに気付いていたかどうかは分からない。
ただ無言のまま一八は、自分の胸に額をこつんとぶつけた可那子を抱き上げながらあぐらをかいた。
「きゃあっ!」
上に跨らせた可那子の服を鋭い爪で裂くと、驚いて声を上げた可那子の露わになった胸に唇を寄せた。
「あっ、やぁ…ん、…っ」
その先端を唇で食み、舌で転がし、甘噛みする。
その刺激に可那子が身じろぎするたび、柔らかな体をつかまえているデビルの爪がその肌に小さな傷を作った。
そして一八は自身の上にかぶさるスカートを邪魔そうに払い下着を引きちぎった。
可那子の体を軽く浮かせる。
「――…っ!!」
その時可那子は、喉の奥で小さく悲鳴を上げた。
中心に宛てがわれたデビルのペニスは、薄闇の中でも普段の一八のものより質量の多いそれだと見て取れた。
いつでも可那子の中を埋め尽くし満たしてくれる普段の一八。
後にも先にもそれ以上のものを受け入れたことのないそこに、小さな入口を無理やり押し広げてデビルのペニスがねじ込まれる。
「――…ああぁっ!!」
今まで感じたことのない圧迫感と焼け付くような痛みが可那子を襲う。
苦しくて息ができない。
溢れた涙がとめどなくこぼれ落ちた。
「きゃ、あぁ…っ、あ、あぁ…っ!」
しかし一八は容赦なく可那子の腰を掴んだまま持ち上げ、引き下ろし、その度に最奥を抉るように自らの腰を回した。
涙が止まらない。
痛みのせいなのか、正体の分からない不安のせいなのか。
それらが溶けた大粒の涙は、デビルの胸にも転がり落ちた。
しかしそれでも。
やはり一八は、可那子が唯一愛した男で。
姿かたちは違えども、“一八に抱かれている”という事実が可那子に与える精神的な効果は絶大だった。
「一八、さん…っ」
首に抱きつけばしっかり抱きとめてくれる力。
つらいだけで終わると思っていた可那子の体にぞくりとした快感が走りぬけ…唇の端からは艶のある吐息がこぼれ落ちた。
「は…っ一八さ…一八さんっ、あ、ああ…っ」
少しずつ上り詰めていく可那子。
ひと際強い快感の波が押し寄せた、その時だった。
「―――!!」
可那子の体がびくんと震えた。
くすぶったままだった言いようのない不安が、突然業火となって可那子を襲ったのだった。
「や、です一八さん…っ!いや…っ」
首を振り腕を突っ張って一八から逃げ出そうとする。
こわかった。
デビルが、じゃない。
一八が、でもない。
最愛の人を失うかもしれない、という予感が頭をよぎったから。
「どうした、イけ」
「いやぁ、あ、あぁ――…っ!」
だから、拒んだ。
今さら無駄だと、分かっていたけれど。
「一八、さ…かずやさん…っ」
イってもなお一八は動きを止めない。
すぐに昂められ繰り返しイかされる可那子。
「お願い、です…っ」
可那子は必死に一八にしがみついた。
デビルの肩口に生えた棘が腕を傷付けるのも構わなかった。
止まらない涙を拭うこともしなかった。
ただ必死で、飛びそうな意識をかろうじてつなぎ止めながら、声にならない声で懇願した。
――行かないで、一八さん――…!!
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