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いつもと変わらない一日を暗転させる黒服の報告に、可那子は言葉を失った。
卑劣な手段で罠にかけられ、一八が傷付けられた。
行動を起こしたのは、三島財閥直属の部隊、鉄拳衆だと。
そしてそれは、可那子の正常な思考を奪うのに十分な内容だった。
「幸い命にかかわるほどではありませんから、すぐに戻られますよ。ご安心ください」
その言葉が、耳に届かないほどに。
「可那子様?」
一点を見つめたままの可那子に黒服が声をかけると、可那子はぽつりと訊いた。
「風間仁は…どこにいるの?」
以前、可那子は仁にさらわれ心に大きな傷を負った。
その時に知った事実が、仁は一八の息子であること、そして三島財閥頭首であることだった。
「…っ、申し訳ありませんがそれは答えられません。それに一八様からは、可那子様を部屋から出さないようにと指示されていますから」
一八は、今回の襲撃が本当に仁が指示したものなら可那子は自分のもとに置くつもりだった。
しかし一八には分かっていた。
今回自分を襲った鉄拳衆は、仁の指示なく動いたものだということを。
仁がいないのなら、万が一可那子が狙われたとしても部屋をSP達に護らせれば安全だった。
だから一八はそう指示を出した。
しかし当然それを知る由もない可那子は、目の前の男に向かい静かに口を開いた。
「風間仁の居場所以外、答えとして認めない」
「――っ!!」
普段の可那子からは想像もつかないような表情と言葉、そしてその口調に黒服が凍りつく。
それは、怒りだった。
一八を傷付けられたことに対する、純粋な怒り。
初めて目の当たりにする可那子のそれに、返す言葉が見つからなかった。
「もう一度訊きます。風間仁は――どこ?」
皆、可那子は一八の所へ行くと言ってきかないと思っていた。
心配よりも怒りが上回ったのはおそらく、一八を傷付けたのが三島財閥だったから。
力ずくで部屋に閉じ込めることも当然できた。
しかし目の前の可那子は、それすらも憚らせた。
仁は三島財閥本社ビルにいるはずだと聞き、それでもなんとか宥めようとする黒服の言うことにも耳を貸さず可那子は部屋を出る。
そしてSP達には絶対についてくるなと言い残し、一人タクシーに乗り込んだ。
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