⑧
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
結局駄目とは言えないまま、今日は花見当日。
場所を花見の会場に移す間もその後も、終始楽しげな可那子とは対称的に不機嫌そうな一八。
「可那子様、やはり我々は…」
「ダメです、みんなで楽しまないと!」
一八の表情を窺いながら遠慮がちに言う黒服たちに、しかし可那子は譲らない。
「あ、でもひとつだけお願いをしていいですか?」
そうした後可那子はそう切り出し、SPの男たちに何やら頼みごとをした。
そして、少し離れた所で睨みをきかせている一八に向き直る。
「一八さん…」
可那子は一八をじっと見つめた。
「……」
一八はそんな可那子をにらみ返す。
しばらくのにらみ合いの末、軍配は可那子に上がった。
くそっ、と小さく悪態をつき、観念してシートにどかりと座る一八。
「注げ」
「はい!」
グラスを差し出す一八に、可那子は嬉しそうにお酒を注いだ。
それを見た全員が密かに安堵のため息をついたのは言うまでもない。
「後でおぼえておけ」
そんな一八のセリフに、可那子だけは一抹の不安を覚えてはいたのだが。
それでも可那子は、その後一八と黒服たちの間を忙しく動き回りながら、その時間を楽しんだ。
皆もそんな可那子につられ、時には一八にお酒を注いだりもしながらひとときの平和な時間を楽しんでいた。
そんな空間の中で、一八を包む空気も少しずつやわらかくなっていった。
そして日が暮れる頃には、一八とほとんど呑んでいない可那子だけを残し全員が酔いつぶれていた。
「片付けは終わったのか」
美しく咲き誇る桜をぼんやりと見上げていた可那子を、一八が後ろから抱きしめた。
「一八さん…」
可那子はその腕にそっと触れる。
「今日はわがまま言ってごめんなさい。でも、ありがとうございました」
「お前のことだ、あいつらにも息抜きをなどと考えていたんだろう」
可那子の言葉に、一八はそう言ってふんと笑う。
「やっぱり一八さんは、何でもお見通しですね」
可那子はふふっと嬉しそうに笑う。
文句を言いながらも、可那子のことをよく分かってくれているのが一八で。
可那子はそれが、たまらなく嬉しかった。