⑦
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明け方目覚めた可那子だったが、後ろから抱きしめる一八の腕がほどかれず身動きができない。
しかし自分を包んでくれる一八のぬくもりに安心しきった可那子は再びその瞳を閉じ、優しい眠りへと落ちていった。
その後、一八のぬくもりがないことに気付いて目覚めたのはお昼ごろだった。
「起きたのか」
けだるい体を身じろぎさせると、声がかけられる。
「ごめんなさい、ずいぶん寝坊しちゃいました…」
言いながら体を起こした可那子に、一八がコーヒーを差し出した。
ありがとうございますと受け取ったそれは、やわらかく香り立つブラック。
そこに溶けた一八の優しさを、可那子はゆっくりと味わった。
その後、シャワーを浴びルームサービスで食事をとった。
そして食後にはもう一度一八の淹れたコーヒーを楽しみ、二人の時間はゆったりと過ぎて行った。
「一八さん、部屋に戻りましょう」
3月14日の夕陽がビル群に沈むのを眺めながら可那子は、そう言って振り返りにこりと笑う。
「もう十分すぎるくらい、一八さんを独占させてもらいましたし」
すると一八は、小さくため息をつきソファから立ち上がった。
「ったく…この時間を作ったのはお前のためだけじゃないんだぞ」
「え?」
隣に立った一八を可那子は見上げる。
「分からないのか?…求めているのはお前だけじゃない、ということだ」
「…っ、一八さん…」
「来い」
「あ…っ」
強く抱きしめられ、体が浮き上がる。
二人の体はそのまま、ベッドへと沈んだ。
疲れを知らないかのような一八に相変わらず激しく抱かれ、結局その晩可那子はそのまま眠ってしまった。
次の日まだまだ軟弱だなと言われたけだるい体のまま部屋に戻ってみると、案の定一八の携帯は大変なことになっていた。
「……」
うんざりといった表情を浮かべる一八。
面倒そうに身支度をしながら、その間にもかかってくる電話にこちらも面倒そうに対応していた。
「頑張ってください、一八さん。でも…」
見送る可那子が、一八を見上げてはにかむ。
「でも、なるべく早く…帰ってきてくださいね」
「…、ああ」
可那子の言葉に短く返事をした一八は、可那子を上向かせ軽くキスを落とした。
そのまま背を向け、出かけていく。
不意打ちのキス。
残された可那子は、これも前にもあったような気がする…と、真っ赤になりながら思うのだった。
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