④
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それからどれだけの日々が過ぎたか分からない。
体の傷も腕の傷も――一八の痕はとうに消えてしまった。
信じて待つことしかできない可那子。
いつ戻るか、戻るかどうかも分からないけれどそれでも信じて待つことしかできない可那子にとっては、一日一日が千秋の思いだった。
可那子は何度も涙を流した。
少し落ち着いたと思っていても、ふと気付くとまた涙が溢れていた。
そうして終わっていく、その日も毎日の中の一日だと思われた。
その扉が開くまでは。
一八がいない今、ベルが鳴り可那子が鍵を開けるまでは決して開くことのない扉。
それを可那子以外に開けることが出来る人間は一人しかいない。
「一八さん…!!」
そう、そこに立っていたのは紛れもなく、待ち続けた最愛の男、一八だった。
しかし一八は、可那子の存在そのものに驚いているようだった。
それもそのはず、一八は可那子がもうここにはいないと思っていたから。
だから黒服たちにも何も訊かなかった。
しかし彼らにとっては可那子がいることは当然のことのため、そしてそれは当然一八も承知のこと、だから何も言わなかったのだ。
「何故…、」
小さく呟いた一八に可那子は駆け寄り、その胸をどんと叩く。
「…可那子、」
名前を呼んだその声は、およそ一八らしくない戸惑ったような声音だった。
「言葉なんていりません」
可那子は首を振りそれを遮る。
「あの日…傷つけられたなんて思っていません。でも一八さんがもういらないと言うなら、私は消えます。でもそうじゃないなら、言葉じゃなく一八さんをください…!」
ただの八つ当たりでひどいことをした。
無理やり抱いた体からは出血していたことも知っていた。
それを赦すというのか?
自分にこの女を…これからも愛する資格があるというのか?
傍若無人な一八は影を潜め、見上げる可那子を抱きしめてやることもできず、一八はただ迷っていた。
「やっぱりもう、抱きしめてはくれないのですね…」
一八の沈黙を否ととった可那子は、その視線を哀しげに落とした。
一八の体をそっと押しながら自分の体を離す。
そして胸もとからその手が離れた時だった。
「――…っ!」
そのまま離れていこうとする腕を一八は掴んでいた。
見開かれた瞳には見る間に涙がたまり、瞳を閉じると同時に頬を滑り落ちる。
腕を掴まれ弾かれたように顔を上げた可那子の唇は――…一八のそれに塞がれていた。
息が苦しくなるほどに口づけ、角度を変えてはまた唇を重ね舌を絡める。
一八の首に腕を回し崩折れそうな膝を必死で支える可那子を一八は抱き上げた。
「一八、さん…」
ベッドに運ばれ組み敷かれた時、可那子は小さく一八を呼んだ。
「優しくなんて、しないでくださいね…?」
返事の代わりに可那子を見た一八は、その言葉の意味が理解できない様子で可那子を見つめる。
「一八さんは、一八さんでいてくれなきゃだめなんです」
可那子は柔らかく笑み、一八の頬に手を伸ばした。
「一八さんに抱かれているんだと…ちゃんと、分からせてください…」
一八は目を見開いた。
しかし直後わずかに口角を上げ、ぽつりと呟く。
「お前は本当に…」
「え?」
「…いや」
聞き返す可那子に小さく首を振って見せ、
本当に飽きさせん女だ――…
思いながら身を屈めた一八は、その唇に優しく口づけた――。