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仁とのことがあってから、三週間ほどが過ぎていた。
愛を確かめ合ったあの日から、表には出さないもののおそらくは仕事を調整してくれた一八のおかげでずっと一緒だったため、穏やかに過ごしてきた。
その後、もう大丈夫ですという可那子の言葉に送られ、一八は二週間ほど部屋を空けることになる。
しかし一人になると、まだ完全には忘れられていない心が途端に不安定になる。
嫌な夢に何度も眠りを妨げられ、そのために続く寝不足のため食欲もなくなっていく。
一八が部屋を空けるのは今に始まったことではない。
あんなことがあったとは言えこんなんじゃダメだと思うのに、それでも募るのは一八への想いだけ。
「一八、さん…」
一週間ほど経ったその夜一八の枕を抱きしめた可那子は、取り替えられたカバーの奥に残る一八の匂いに――…欲情した。
私、狂っているわね…
苦笑いと共に溢れた涙が、その頬を伝い落ちた。
「――…っ、ふ、一八さ…、ん…っ」
誰に聞かれるわけでもない部屋の中で声を殺し、一八のものとは全く違う自らの細い指で可那子は自分を慰めた。
虚しくて苦しくて切なくて、可那子は泣く。
「一八さん…」
そしてぽつりとこぼれ落ちた言葉は、窓の外に広がる闇に吸い込まれていった。
「逢いたい、です…」
その日から可那子は部屋にこもり、黒服たちにも顔を見せなくなった。
三日後ようやく姿を現した可那子の顔を見て、黒服が声を上げる。
「どうしたんですか可那子様、ひどい顔色ですよ!ご自分で用意すると仰ってましたけど、ちゃんと食べてるんですか!?」
「ごめんなさい、食欲がなくて」
「少しでも何か食べられませんか?このままでは一八様に叱られてしまいます」
可那子が困ったように笑うと、黒服が焦って問い返す。
「じゃあ…軽いものをお願いします」
これ以上彼らに心配をかけるわけにはいかないと思った可那子がそう答えると、
「はい、すぐ用意しますから!」
そう言って黒服は部屋を後にした。
しかし数分後、ベルを鳴らしても部屋の中からは反応がなかった。
「失礼します…可那子様?」
嫌な予感が脳裏をかすめ、有事のためにと渡されているキーで黒服は鍵を開けた。
部屋を見回す。
「!!」
ソファの脇に、可那子は倒れていた。
「可那子様…っ!!」
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