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二人が逢うのは月に2~3回ほどだった。
大抵は一八の部屋で逢う。
一八が可那子を抱くのは大体が週末だったが、一八の気まぐれでもちろんそれの限りではなかった。
可那子としても、求められれば拒めるはずも拒むつもりも当然なく、ただその時は次の日会社を休むことを覚悟してからその胸に包まれる。
おそらく一八に抱かれることで鍛えられ、体力はついてきているはずだった。
しかしそれ以上に激しくなる一八のセックスに、追い付けていないのもまた事実だった。
そうして半年ほどが過ぎた頃、可那子を悩ませる出来事が起きていた。
それは、可那子の勤める職場でのこと。
同期の男からしつこく交際を迫られるようになっていたのだ。
恋人がいると言っても自分の方が好きだと迫り、時々はマンションにも訪ねてくるしつこさだった。
セクハラだと訴えようにもその男は会社では模範となるような優秀な社員で、下手に騒ぐとこちらの被害妄想だと受け取られかねず、可那子は誰かに相談することもできず悩んでいた。
そしてここ数日、それが特にひどくなっていた。
この日も出がけに押しかけられ、可那子はなんとか振り切りタクシーに飛び乗った。
「どちらまで?」
「あ、あの…」
少し迷った後、行き先を告げる。
「G社ビルまでお願いします」
約束はしていなかったが、どうしても一八に逢いたくなってしまった可那子は、携帯の通話ボタンを押した。
『…どうした』
数回コールの後聞こえてくる一八の声に、ほっとする。
しかし、
「今日、逢いに行ってもいいですか…?」
『今日は遅くなる』
「、そうですか…」
そこで可那子は諦めてしまう。
約束なしで押しかけたことのない可那子は、部屋で待っていいですかという言葉を知らなかったから。
その時、一八が問いかけてくる。
『おい、今どこにいる』
「…っ、家です、けど…」
咄嗟に嘘をついたものの、一瞬の間で一八には感付かれてしまう。
『…部屋で待ってろ』
「え…、はい」
思ってもいなかった言葉に驚く可那子だったが、素直に返事をし
「あっ仕事中だったんですよね、すみません…」
『構わん』
切れた携帯を握りしめ、G社ビルへと吸い込まれていった。
部屋に足を踏み入れると、一八の匂いに包まれ一気に緊張がほぐれる。
無造作に脱ぎ捨てられた一八のジャケットを抱きしめ、可那子はソファの端にうずくまった。
まだ陽は高い。
遅くなると言っていた一八が戻るまでには、まだおそらく半日以上かかるだろう。
可那子はいつの間にか眠ってしまっていた。
「……?」
どのくらいの時間が過ぎたのか、自分の頬に何かが優しく触れる感触に可那子は目を覚ました。
薄暗くはあるものの視界が遮られるほどではなく、可那子は視線の先にその姿を捉えた。
ソファの肘掛けに腰掛け、こちらを見下ろしている一八の姿を。
「ごめんなさい私…いつの間にか眠っちゃったんですね…」
言いながら、抱きしめていたジャケットのしわを伸ばす。
「まだ時間早いみたいですけど…お仕事終わったんですか?」
「…ああ」
腕時計で日付けと時間を確かめながら訊くと、一八は小さく答えた。
「そうですか…ありがとうございます」
おそらくは自分を心配してくれたであろう一八の行動が嬉しくて、口もとが自然と緩む。
その笑みのまま、可那子はゆっくりと口を開いた。
「おかえりなさい、一八さん」
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