これからもずっと
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仁さんと出逢って…お付き合いするきっかけになった、絶海の孤島でのドキドキサバイバル。
でも結局それは全て計画されたもので。
巻き込まれた形になってしまったお詫びにと貰った南の島へのチケットで、あたしは仁さんとふたり、両親の待つペンションへとやって来た。
「わぁ…っ、見て下さい仁さん!海がすごく綺麗!」
部屋に入るなりバルコニーに飛び出して感動の声を上げるあたしに、
「お前んちのペンションだろ?何度も来たことあんじゃねぇのか」
仁さんは呆れたように言う。
「それがですね、この前に来たのは小学校2年生くらいの時だったから、あんまり覚えてないんですよ」
あたしの言葉を聞いてるんだかいないんだか、荷物を置いた仁さんはソファにどさりと腰掛ける。
「もう、仁さんてば…」
「分かったから、少し休ませろ」
「はぁい…」
口ではちょっと拗ねたように言ってみたけど、本当は分かってるんだ。
仁さんはあのサバイバル生活の後、しばらくやめていたテニスをまた始めたってこと。
自分に課した厳しいトレーニングを、今回は休んで一緒に来てくれたんだってこと。
だからせめてこの旅行の間くらいはゆっくりしてほしいから…あたしはしばらくバルコニーでひとり、夏の陽射しと風を楽しんでいた。
とその時、後ろに人の気配を感じた。
そしてその直後、あたしが振り返るより早く、あたしは仁さんの腕に包まれていた。
仁さんはそのまましばらくあたしを抱きしめていた。
右側に感じる仁さんの息遣いに、頬が熱くなる。
「仁、さん…」
沈黙に耐えかねてあたしが口を開くと、仁さんの大きな右手があたしの左頬に触れた。
「…っ」
親指が、あたしの唇に触れる。
体の向きを変えながらあごを持ち上げられて…見上げた視線を、絡めとられた。
吸いこまれそうな瞳から逃げるように目を閉じたあたしの唇に、ふわりと仁さんの唇が重ねられた。
それはすぐに離れていったけど、あたしの心臓はうるさいくらいドキドキしてて。
「んな怯えんな」
閉じた目を開けられなかったあたしはその声がものすごく近いことに驚いて、目を開けた。
――…のだけど。
目の前にある仁さんの真剣な瞳にまた驚いて、ぎゅっと目を閉じた。
と同時に、もう一度唇が重ねられた。
さっきよりも少し長いキス。
少し離れては角度を変えてまたついばむように。
「っ、は…仁、さ…っ」
それを繰り返しながら少しずつ深くなっていくキスに、あたしは仁さんのシャツの胸もとを握りしめて必死に応えていた。
抱きしめられる、強い力。
くず折れそうなあたしの体くらい、なんともないように支えてくれる。
唇が離れた後、優しく抱きしめられた仁さんの腕の中であたしは、
「すごい…あたし、仁さんとキスしちゃいました」
余裕ぶってそんなことを言ってみる。
すると仁さんは、あたしの耳もとに口を寄せて、言った。
「こんなもんより…もっとすごいこともできるんだぜ…?」
どくん、と。
全身が脈打ったみたいだった。
分かってる。
仁さんが大好きで、仁さんしか考えられないけど…。
でも本当は…まだ、こわい。
だけど――…。
「仁さんなら、いいですよ…」
あたしはその広い胸に額を押し付けて、小さく呟いた。
「……」
しばらくの沈黙の後、仁さんは小さく笑った。
顔を上げると、
「バーカ、キスだけで震えてるヤツ、そうそう抱けるかよ」
言いながら、小さく震えるあたしの手をきゅっと握った。
…バレてたんだ…。
あたしが既にいっぱいいっぱいだってこと…。
「ごめん、なさい…」
仁さん、呆れてるよね…。
子供な自分がイヤで…なんか、涙が出そうだった。
だけど仁さんは、俯いたあたしを優しく抱き寄せてくれて。
「謝んな。――ちゃんと、待ってやるから」
優しく言ってくれた。
「急ぐ必要はねぇ。まだこの先、時間はたっぷりあるんだからな」
「仁さん…」
今度は嬉しくて涙が出そうで。
「それって、プロポーズですか?」
あたしはサバイバル生活最後の日に聞いて怒られた質問を、もう一度口にしてみた。
そうしたら仁さんは
「――…好きなようにとれ」
あたしを抱きしめる腕に少し力を込めて、今度はそう答えてくれたから…
「はい…!」
あたしもその体に腕を回して、仁さんを強く抱きしめたの――…。
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