話をしよう
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「以前から言おうと思っていたんだが…」
その日の部活後、早速ふたり並んでの帰り道。
隣を歩く手塚が珍しく少し言いにくそうに切り出した。
「何?」
横を見上げても、手塚は前を向いたまま。
「手塚…?」
なんだか不安になったあたしは、足を止めた。
その横で立ち止まった手塚があたしを見て、意を決したように口を開く。
「…そろそろ、名字で呼ぶのはやめてくれないか」
…驚いた。
直後、嬉しさがこみ上げてくる。
確かに、手塚はあたしを可那子、と名前で呼ぶけど、あたしは…くせ、かな?ずっと名字で呼んでた。
あたしは、手塚の手を握った。
「照れてるの?」
こんな手塚初めてで嬉しくて、あたしは彼を見上げてちょっぴり意地悪してみる。
「…っ!」
これも初めて見るかも、手塚の焦った顔。
でもせっかく握った手を振りほどかれそうになって、
「冗談だよ、ごめんね」
あたしはその手を握り直しながら笑って見せた後、
「望んでくれて、嬉しい。ありがと、国光…」
初めて、その名前を呼んでみた。
いざ呼んでみたら、あたしもなんだか恥ずかしくて俯いちゃう。
だけど、ふと感じた優しい感触に顔を上げると、空いた手で頭をなでてくれる手塚の綺麗な瞳があたしを見つめていた。
「帰ろう、可那子」
「うん」
繋いだままの手に少し力を込めて、あたしたちは歩き出した――。
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