話をしよう
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告白してOKはもらった。
けれど、それ以来手塚は何も言ってくれない。
テニス部の練習が忙しくて、帰りが遅くなるからといつも先に帰されて平日は一緒に帰れないし、休日もほとんど部活で、あまり逢えない。
もちろんそんなことは付き合う前から分かってたことだから、わがまま言って煩わしたくないし、邪魔したくないって思ってた。
だけど、やっぱり、本当は。
一緒に帰れなくてもいいなんて、ウソ。
全然逢えないのも、平気なワケがない。
あたしはもっともっと、手塚と一緒にいたいの!
このままだとあたし、手塚を攻めてしまう。
これ以上は、自分を騙せないから。
だから、別れようと思うの。
テニスとあたし、どっちが大事なのなんてバカなこと聞いてしまう前に…別れよう、手塚。
面倒な女だと思われるのを承知で自分の想いと別れを告げたあたしを、手塚はあの日…あたしが告白した時と同じように、驚いた顔で見ていた。
その後、一度その綺麗な瞳を伏せると、ゆっくりと口を開いた。
俺がテニスに没頭していても、お前は待っていてくれると勝手に思っていた。
すまない…お前のことを考えているつもりで、全く考えてなかったんだな、俺は。
だから、お前が何を望んでいるのか…分かっているつもりで、分かっていなかった…。
手塚の形のいい唇が言葉を紡ぐのを、あたしはぼんやりと見ていた。
そして、
「俺の…甘えだ」
そう言った後一旦言葉を切った手塚は、あたしの大好きなくもりのない瞳でまっすぐあたしを見た。
「別れよう、可那子」
その言葉に、自分から切り出したくせにあたしは目を逸らし、俯いた。
だってあたしはまだ、手塚のこと、好きだから。
だけど…
「そして、改めて…俺と付き合って欲しい」
続けられた彼の言葉に、あたしは驚いて顔を上げた。
「手塚…」
「こんなことならかっこつけてないで、練習を最後まで見て行けと、俺が送るから家にはちゃんと連絡しろと言えば良かったと、お前の話を聞きながら…後悔した」
手塚はそこでもう一度あたしをまっすぐに見て、続けた。
「俺はお前が好きだ、可那子。今度は独りよがりじゃない本当の意味で…大切にしたい」
涙があふれた。
同じだったんだ、手塚も。
一緒にいたいと思ってくれていた。
「すまなかった、可那子…」
手塚はあたしの涙をやさしく拭ってくれながら、それから…と続けた。
「それから、テニスとお前、どっちが大切かという質問だが…」
「答えなくていいよ」
あたしは首を横に振る。
そして問いかけた。
「あたしは、テニスを頑張ってる手塚が好き。その手塚が、あたしを好きだと言ってくれた…でしょ?」
ああ、と答えてくれた手塚は、だからいいの、と笑って見せたあたしをその胸に包んでくれた。
あたしは手塚の制服の背中を握り、こんな時でもあんまり表情の変わらない手塚を見上げた。
「手塚…大好き」
言いながら背伸びしたら、身を屈めた手塚が、優しいキスをくれた。
口に出さなきゃ分からないことなんて、たくさんある。
同じ望みを持っていたのに、ずいぶん遠回りしちゃったね。
もっと話をしよう。
ずっとずっと、一緒にいたいから。
→おまけ。