イケナイ誕生日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シャワーを浴び終えた時、時刻は午後8時を回っていた。
校舎を出て、空を見上げる。
冬の澄んだ空には、珍しくたくさんの星が輝いていた。
「――…」
ため息が白く流れ、それに気付いて苦笑いがこぼれる。
今日は俺の誕生日だ。
しかし俺は部活後、ひとり残ってトレーニングをしていた。
先輩方やチームメイトには祝ってもらった。
けれど、一番祝って欲しい人には今日は逢えないと分かっていたから。
俺の恋人は社会人だ。
付き合い始めたきっかけは、逆ナン(というのだと、忍足先輩が言っていた)。
年末に向けてのこの時期が一番忙しいらしく、初めての誕生日を一緒にお祝いできなくてごめん、と泣き出しそうな勢いで謝られた。
もう一つため息を逃がしてから、俺は校門に向かった。
「…若」
校門を出たところで声をかけられた。
ここにいるはずのない人の声。
だけど、聞き間違うはずのない声。
「可那子さん!?どうしてここに…」
「若の家行ったけどまだ帰ってないみたいだったし、だったらここかと思って…来ちゃった」
「仕事は…」
「必死で終わらせたよ、だってどうしても逢いたくて」
そう言って少し照れくさそうに笑うその人は、俺が今日一番逢いたかったその人で。
「うわ、冷え切ってるじゃないですか。いつから待っててくれたんですか…すみません」
だけどその体を抱き寄せて、驚いた。
「ううん、謝らないで。私が勝手に来たんだから…」
「とにかく部室に行きましょう、少し暖まってください」
手袋もせず赤くなった手を振って申し訳なさそうに言う可那子さんを連れて、俺はさっき暖房を切ったばかりの部室へと戻った。
「誕生日おめでとう、若!」
「ありがとうございます」
「……」
週末にもらうはずだったプレゼントを受け取りちゃんとお礼を言ったのに、どこか気に入らなかったのか可那子さんは無言で俺を見ていた。
「どうかしましたか?」
「まだ敬語抜けないの?」
問いかけた俺に返ってきたのは、付き合い始めた頃からの可那子さんの要望。
「無理ですよ、可那子さんは年上なんですから」
「仕方ないでしょ、私だって若が中学生だなんて思わなかったもん」
すると俺のいつもの言葉にそう言いながら頬を膨らますから、
「老けててすみませんね」
なんて少し拗ねた風に返してみると、
「やだ、そんなことない。すごく大人っぽい雰囲気だったってことだよ」
慌ててフォローしつつ、温かみを取り戻しつつある手のひらで俺の頬に触れた。
「意味合いはあまり変わりませんけどね」
「ふふ。でもその中学生に、この神聖な場所でイケナイことしたら…怒られちゃうかな?」
言いながら、頬を滑らせた指先で他の人には絶対触らせない俺の前髪を梳く。
「するんですか?」
「…するよ。だって若にどっぷりハマってるもん」
問い返した俺にそう答え、俺の首に手を回して見上げてくる。
やばいな、なんだろう…すごく、可愛い。
抑えられない…かもしれないな。
「仕方ない人ですね。ですが、そのまま抜け出せないように閉じ込めておかなきゃいけないので…」
でもそんなことはおくびにも出さず、余裕なフリして口を開いた。
「…内緒でしましょうか、」
言いながら、腰のあたりを抱き寄せる。
「――…イケナイこと。」
(12,12,5)
1/1ページ