一緒に受け取って
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「日吉っ誕生日おめでと!はい、これ」
12月5日、氷帝テニス部レギュラー専用の部室。
全員着替えが終わった頃を見計らって部室に入った可那子は、まっすぐ日吉に向かいそれを差し出した。
しかし日吉はちらりと可那子を見て目を逸らし、ぼそりと言った。
「受け取れません…受け取りたくない」
「お前何言ってやがる!せっかく可那子が…」
「まぁまぁ、宍戸さん」
それを聞いて声を荒げたのが宍戸で、その宍戸を宥めるのが鳳。
鳳が可那子に目配せして、宍戸の背を押し部室を出て行くのを見送った可那子は、日吉に向き直る。
「どうして?」
「俺にはもっと欲しいものがあるんです」
可那子が問うと、日吉は目を逸らしたままそう答えた。
「それは…何?あたしがあげられるもの?」
「…あなたしか持っていないものですから」
その日吉の言葉に、とくん、と可那子の胸が小さく脈打つ。
そこに広がるのは、淡い期待。
「それって…」
「あなた自身です、可那子先輩」
立ち上がりそう言った日吉を見つめる可那子の顔には、一瞬だけ驚いた表情が浮かぶ。
しかしそれはすぐにやわらかい笑みに変わり、
「じゃあますます受け取ってもらわなくちゃ!」
可那子はそう言いながら、自分が用意したプレゼントの包みをやや強引に日吉の手に持たせる。
勢いに押されそれを受け取った日吉は、
「…じゃあ、開けますよ?」
しぶしぶといった感じで包みのリボンを解いた。
可那子はそんな日吉をじっと見つめる。
その瞳は少し不安そうに揺れていた。
「これは…」
中に入っていたのはリストバンドと、一通の手紙。
『日吉、お誕生日おめでとう。
日吉が前にかっこいいって言ってくれたリストバンド、それとお揃いのを贈ります。
もしよかったら、手首にはめてほしいの。…できない時は、捨てて下さい』
日吉は思い出していた。
以前日吉は可那子のそれを見て、そのリストバンド、かっこいいですね…と言ったことがあった。
めったに無駄口を叩いたりしない日吉が自分から可那子に話しかけたことを、周りで聞いていたレギュラーメンバーも珍しがっていた。
日吉はしばらく見つめていたそれを、無言で手首にはめた。
それを見た可那子の不安げだった表情が緩む。
そして、似合うよ、と笑った可那子を日吉は強く抱きしめた。
「日吉…?」
「…ありがとうございます」
かすかに震える、日吉の声。
可那子の中にこみ上げる愛しさ。
「ううん、こっちこそ…」
首を小さく横に振りながら、可那子はそっと日吉の背中に腕を回し問いかけた。
「あたしの気持ちも、受け取ってくれたと思っていいんだよね…?」
「はい。…好きです、可那子先輩」
そう答えた日吉は、抱きしめる腕に少し力を込める。
「あたしも大好きだよ、日吉…」
可那子もそれに応えるように日吉の胸に顔を埋め、囁いた。
そしてもう一度繰り返す。
「日吉…お誕生日、おめでとう」
→おまけ。
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