Special Birthday
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それは、バレンタインも間近のある日。
部活の休憩中、耳に入ってきたのは可那子先輩と宍戸さんの会話だった。
「もうすぐバレンタインかぁ」
「お前は誰かにチョコやんのか?」
「あげないよ。義理も買う予定ないし」
「お前…義理チョコくらいよこせよ」
「一年の時はあげたでしょ。でもあたしがあげなくたってレギュラー陣は山ほどもらうじゃん。それも本命チョコばっかり」
「まあそうだけどよ」
「なのにみんな揃って彼女いないとか意味分かんないけどね」
「ほっとけよな」
「あはは」
そっか、可那子先輩は誰にもあげないんだ…。
俺は密かに安堵のため息をついた。
もちろん欲を言えば義理チョコだっていいから欲しいと思うけど、誰にもあげないってことは少なくとも今のところ誰かのものにはならないってことで…とりあえず安心する。
だけど、そんな安心も束の間だった。
バレンタイン当日、休み時間ごとにやってくる女の子たちから逃げるようにトイレに行こうとした時、廊下の先に可那子先輩を見つけた。
俺には気付かず行ってしまったけど、俺はそこで動けなくなっていた。
もう見えなくなってしまった先輩の姿が頭から離れない。
「どうして…」
我知らず声が漏れる。
可那子先輩の胸に大事そうに抱えられていたあれは…。
綺麗にラッピングされて、リボンのかけられたあれは…!
嘘だったんだ…、誰にもあげないって言ってたのに…。
結局また女の子たちに囲まれてもみくちゃにされ…気付いた時には部活の時間になっていた。
その間俺の中に渦巻いていたこの感情は、間違いなく嫉妬。
誰に対してかも分からない嫉妬で、表面上笑顔を浮かべながら心の中はぐちゃぐちゃだった。
顔を合わせたくなかった。
だけど部活を休むわけにはいかない。
俺はなるべく可那子先輩だけじゃなく他の部員たちとも距離をとりつつ、その日のメニューをこなした。
だから俺は大事なことを失念していることに気付いていなかったんだ。
着替えを済ませ、チョコの詰まった大きな紙袋を手に持った時、
「帰るぞ、長太郎」
宍戸さんに呼ばれた。
と同時に、心臓が大きく脈打った。
…忘れていた。
方向が同じだから、いつも一緒に帰ってるんだった…宍戸さんと可那子先輩と、三人で。
帰り道、宍戸さんと可那子先輩は今日もらったチョコの話で盛り上がっていた。
「すごい、今年も大収穫だね」
「跡部にはかなわねぇけどな」
「ま、それは仕方ないね、跡部は別格だもん」
「長太郎も去年より増えたよな、っていうか俺より多いだろ」
「えっ?何ですか、宍戸さん」
途中突然話を振られ、俺は焦って返事をする。
「どうした?長太郎…今日はずっと上の空だったな」
「そんなことないですよ、ちょっとぼーっとしてただけです」
俺は心配そうに聞いてくれる宍戸さんに笑ってごまかした。
「そうか?ならいいけどよ。じゃあな、また明日」
その言葉に、いつの間にか宍戸さんと別れる場所に来ていたことに気付く。
「はい、お疲れさまでした」
「じゃあねー」
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