俺のそばに
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あたしは今、恋をしてる。
相手はテニス部の3年生、忍足侑士先輩。
入学式の日、広すぎる学校で迷ってたあたしに声をかけてくれたのが忍足先輩だった。
ちょうどテニスコートの見える場所で、迷っていた間の緊張と不安と、声をかけてもらった安心感とで泣き出してしまったあたしに
「もう大丈夫や、安心しぃ」
と優しく言って、ぽんぽんと頭をなでてくれた。
学校生活が始まってからも先輩は、会えば挨拶とちょっとしたお喋りなんかもしてくれる。
好きにならない方がおかしいと思えるくらい、優しくて気さくな先輩。
ライバルもきっと多いけど、恋する気持ちは止められない。
高望みなんてしない。
ただ好きでいるくらい…許されるよね。
そんなある日のことだった。
「蔵本、ちょっといい?」
テニス部の練習を見てたあたしは同じクラスの男子に声をかけられ、中庭で告白された。
「ありがとう、気持ちは嬉しい。でもあたし、好きな人がいるの…。だから、」
「好きな人って、テニス部の忍足さん?」
ごめんなさい、と頭を下げようとしたらそう訊かれて。
あたしは否定できなかった。
嘘はつきたくなかったから。
想いは届かなくても、好きでいたかったから。
「こんなこと言いたくないけど…少し仲良くしてもらってるくらいで期待しても、泣くのは蔵本だよ?だから、俺のことも少し考えてみてよ」
その言葉に言い返したかったのに結局何も言えず、
「分かってるもん、そんなこと…」
ひとりになった後、つぶやいた言葉と一緒に涙がこぼれた。
「あの男と付き合うんか」
「えっ!?」
その時突然後ろから声をかけられて、振り向きざまに慌てて涙を拭う。
まさかと思ったけど、やっぱりその声を聞き間違うはずはなくて。
そこには忍足先輩の姿があった。
「…何、された」
先輩の声が、いつもより少し低くなって…
「何でもないんです、…っ」
笑おうとしたのに、逆に涙があふれる。
その時、先輩が小さくため息をついたみたいだった。
「ここまで余裕ないんは初めてや」
「先輩…!?」
つぶやかれた言葉と同時に感じる強い力。
あたしは、先輩に抱きしめられていた。
「クールさが売りの俺が、お前のこととなると全く冷静でいられへん…。責任、とってもらうで?」
あたしの頭を撫でながら、先輩が言う。
「入学式ん時、泣いてるお前を見て…思わず抱きしめたくなるくらいかわいいと思った。けどやっぱ、泣いとるより笑とる方がかわいい」
「先輩…」
「俺はお前を泣かしたりはせん。だから、俺のそばにおり」
あたしは信じられない気持ちでいっぱいだった。
だけど、抱きしめられる強さと温かさが夢じゃないことを教えてくれる。
「俺から離れんな…いや、離さへん…。好きやで、可那子…」
「あたしも、忍足先輩が好きです…っ!」
そう答えて先輩の体に腕を回した。
すると先輩が
「その呼び方気に入らへんわ…侑士って呼んでみ?」
ぽつりとそんなことを言うから、あたしは先輩を見上げて呼んでみる。
「侑士…先輩?」
「ま、それでええわ。しばらくはな」
言いながらやわらかく笑う先輩。
気が付いたら、息がかかるくらい近くに先輩の顔があった。
あたしは、ぎゅっと目を閉じる。
すると先輩がふ、と笑った気がして…おでこにキスをされた。
「ま、これも我慢したるわ」
耳もとで囁かれる。
「もうしばらくは、な」
→おまけ。
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