声に出して
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「は、初めましてっ、丸井可那子といいます!」
ブン太くんの計らいで、あたしの目の前には今ジローくん本人が立っていた。
「初めまして…ではないけど、芥川慈郎です、よろしく~」
緊張しすぎてテンパるあたしにジローくんはそう言って、あの無邪気な笑顔を見せてくれた。
「そ、そうでした…」
間違いに気付いて顔を上げられないあたしはたぶん、耳まで真っ赤だと思う。
「こいつを紹介した理由は、メールで説明した通りだ」
その時、ブン太くんが口を開いた。
「だから、俺の仕事はここまで。後は任せていいよな?」
「うん、大丈夫だよ~」
「!?」
そのやり取りに驚いて、あたしは顔を上げる。
何を言い出すのブン太くんっ!
いきなりふたりきりとか大丈夫じゃないからっ!
きっとあたしは縋るような目をしていたと思うのに、ブン太くんは
「じゃな、頑張れよ」
とウインクひとつ残して本当に帰ってしまった。
会って数分でふたりきりとか、どうしたらいいの…。
ブン太くんが帰って行った方を、もう姿は見えないけどあたしは見つめていた。
でもそんな心配はジローくんがしっかりと解決してくれたんだ。
心臓だけはいつまでも休まることを知らなかったけれど。
「可那子ちゃん?」
「はいっ!」
突然名前を呼ばれて、反射的に背筋が伸びる。
「あはは、緊張しすぎ~。もっと肩の力抜いてごらん?」
そんなあたしを見て、ジローくんはやわらかく笑う。
その笑顔に少しだけ落ち着いたあたしは、深呼吸をひとつ。
ジローくんを見上げる。
「今日は、ありがとうございました。会えて嬉しかったです」
「どういたしまして!俺も嬉しかったよ」
社交辞令だとしても、思いも寄らない言葉を返されて、あたしはまた顔が熱くなる。
「さて、じゃあこれからどうしようか?」
「これ、から…?」
その時突然質問された内容を、あたしはうまく理解できずに問い返してしまった。
これから…って、今日これからってことだよね…?
それとも…ううん、そんなこと…っ!
あたしの頭の中は、軽くパニックになっていた。
それを軽くショートさせて止めてくれたのは、ジローくんの言葉だった。
「付き合ってみる?」
「え!?でも…っ」
びっくりしたけど、正直嬉しいって気持ちもあった。
でも…願ってもない言葉だったけど…はい、って簡単に答えていいの?
頭の中は、またぐるぐる。
だけど
「お互いを知る為には一番だと思うんだ。お互いを知った後まだ付き合うかどうかは、その時考えようよ」
そう言ったジローくんが、ね?って顔を覗き込むから、気付いたらあたしは
「はい…」
って答えてた。
「決まりだね!じゃあこれからよろしく!」
「えっ?あ、あの…っ」
あたしが答えた直後、ジローくんはあたしの手を取って歩き出した。
「俺たちはカップルでしょ?」
やわらかな笑み。
つないだ手のあたたかさ。
「はいっ」
じんわりと実感がわいてきて、あたしはジローくんの手をしっかりと握り返して、隣に並んだ。
「さしあたって今日のところは…お茶でもしようか」
そう言ってジローくんは、ファストフードでハンバーガーやポテト、ドリンクを買った後公園に連れて行ってくれた。
ベンチに座りそれらを頬張りながら、あたしたちはいろんな話をした。
食べた後すごく眠そうなジローくんに膝枕もしてあげた。
めちゃくちゃ緊張したし恥ずかしかったけど、ジローくんの寝顔が天使みたいでかわいくて。
あたしはジローくんをもっと好きになれるって、この時思ったんだ。