そんな君が好き
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ベッドに移ってからも、私たちは何度も抱き合った。
さしもの立海大でも明日くらいは休みなんだろうな、なんて考えられたのも一瞬で、私はただ赤也との行為に溺れた。
めちゃくちゃに抱き合って、ぐちゃぐちゃになって、泥のように眠り…目覚めたのは昼も近くなった頃だった。
昨夜の激しさを物語るように軋む体を起こし、隣に眠る恋人を見る。
目じりから頬に残る涙の跡にそっと指を這わせると、小さく声を漏らした赤也がうっすらと目を開けた。
「おはよう、赤也」
「おは、よう…」
どこか恥ずかしそうにはにかむ赤也がとても愛しくて、体を起こした赤也を私は抱きしめた。
けれどお互いの感触がひどいことになっていて、顔を見合わせた私たちは
「シャワー、浴びよっか」
と笑い合った。
「今日は部活…ないんだよね?」
濡れてくるくるになった赤也の髪を拭いてやりながら、私は聞いた。
つらい事実を思い出させてしまうのは私もつらかったけど、大会後なんて関係なく部活があるなら、もう遅いかもしれないけれどさぼらせてしまうわけにもいかないから。
だけど赤也は、
「そんな言いづらそうにしなくて平気。俺、もう大丈夫だから!でも可那子さんのそういう優しいとこ、やっぱ大好き。ありがと」
私の気持ちまで読み取って、安心させるように言ってくれる。
質問の答えとは少し違ってたけど、この様子なら部活は休みのようでとりあえずひと安心。
と思ったところへ、
「うわ、なんだよこれ!」
先に部屋に戻った赤也の声が届く。
慌てて部屋に戻ると、赤也は握りしめていた自分の携帯の画面を私の方に向けた。
画面には未読メールがずらりと並んでいた。
受け取って画面をスクロールさせても、並ぶのは未読メールの山。
昨晩から、新しい物はついさっき届いたものまで。
古い方には私の名前もある。
「不在着信メールと…丸井くん、桑原くん…ってレギュラーメンバーの子たちだよね?」
差出人の名前を見て、私は赤也に携帯を返しながら聞いた。
「うん、仁王先輩も柳生先輩も…」
「みんな赤也のこと心配してるんじゃない?携帯の電源も切っちゃってたしね」
「うん、電源切って何してんだーって。今スポーツ公園のテニスコートにいるから、さっさと来いって」
メールを開きながら言う赤也の頬が緩むのが分かった。
やっぱり、テニスなんだね。
泣くほど悔しいのは、テニスが好きだから。
好きだからこそ、負けても何度だって立ち向かっていく。
なんだか妙に納得した私は、びしょ濡れになって洗濯中の立海ジャージの代わりに、部屋に置いてある赤也のジャージを手渡した。
「持つべきものは仲間だね」
靴をはく赤也の背中に声をかけると、
「うん、そして彼女」
ぴょんと立ち上がって振り向き、にこっと笑って嬉しいことを言ってくれる。
「俺、今日もう一度ここに帰ってきてもいい?」
「うん、いいよ」
めずらしく照れくさそうに言う赤也に私は答え、笑って見せた。
すると、
「うわ、また電話!今行きますってばっ!じゃあ可那子さん、行って来ます!」
「行ってらっしゃい!」
手の中で震え出した携帯の画面に焦って答えながら、赤也はそれでも笑顔で走り出した。
そして私は――また少し成長した赤也の背中を、誇らしい気持ちで見送ったのだった。
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