涙
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心配かけてすまなかったと、きちんと仲直りするから大丈夫だと、蓮二は言った。
おぼつかない足取りで蓮二の家を出る。
涙は出なかった。
蓮二の前で泣きたくないと願ったからだろうか。
「よく頑張ったね」
辿り着いた家の前で、声をかけられた。
「蓮二は可那子の涙に弱いからね。困らせたくなかったんだろ?」
「精市…」
声の主は、あたしと蓮二をよく知る、あたしたちの親友。
たぶん蓮二は精市にメールして。
心配した精市が駆け付けた時、蓮二の部屋にはあたしがいて。
あたしの気持ちを知って、今に至るんだと思う。
今思えば、精市も既に気付いていたのかもしれないけど。
精市は、あたしが蓮二の前で泣かなかったことも泣きたくなかった理由も分かってた。
「…かなわないな、精市には」
あたしがはは、と笑うと、
「もう、いいんじゃないかな」
そう言った精市の手があたしの頭に乗せられた。
「俺の前で我慢したことなんてなかったろ?」
「精市、…っ」
さっきまで気配すらなかった涙が、精市のたった一言に誘発されて、こみ上げる。
「何よ…あたしが泣くたびにばかにしてたくせに…」
それでも憎まれ口を叩くあたしを精市は、いいから…と自分の胸に包み込んだ。
「精市…」
「こういう時は、甘えればいいんだ。我慢することも抑えることもしなくていい。…蓮二が、好きだったんだろう?」
いつもの精市の優しい声が、ずるいあたしが自分のために泣くことを赦してくれているみたいで。
堰を切ったように溢れて止まらない涙が、あたしの頬を流れ落ちる。
「精市…蓮二…っ蓮、二ぃ…」
精市の胸で、精市の服を握りしめ、蓮二の名前を呼びながら、
あたしは、声を上げて、泣いた。
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