愛しすぎて
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「待…って、雅治…今日は、ちょっと…ね」
仁王の部屋。
可那子に一目惚れした仁王の猛アタックの末に付き合い始めたふたりの仲は、今まで何度か体を重ねるほどに進展はしていた。
しかし、まだまだ言いづらいことだってある。
例えば、今日の体調のことだったり。
可那子のことが大好きな仁王は、可那子に触れたくてたまらない。
可那子の気持ちを無視するほどがっつくわけでは決してないが、抱きしめた可那子の腕が自分を抱きしめてくれて、求める唇に可那子が応えてくれるなら、愛おしそうにその体を抱くのだった。
その可那子が、冒頭の言葉を遠慮がちに言いながら自分を抱き寄せようとする仁王の胸をそっと押し返す。
その行動に仁王は動きを止め、わずかに考える。
「おお、生理か」
それは、仁王にとってはおそらく何気ない、可那子を気遣うためだけのひと言だった。
しかし可那子だって年頃の女の子。
その瞬間、可那子は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
「可那子?」
仁王が顔を覗き込むと同時に可那子は勢いよく立ち上がり、
「ばかっ!デリカシーなさ過ぎだよ!雅治なんてキライ!」
恥ずかしすぎてこみ上げる怒りで今にも泣き出しそうになりながらそれだけ言うと、部屋から飛び出して行ってしまう。
「可那子…っ!」
追いかけなくては、と当然のように頭では思うのに、ショックで体が動かない。
階下で玄関の扉が閉まる音がする。
仁王は、ただ途方に暮れた。
電源を切られたのか電話はつながらず、『ごめん』と送ったメールの返事も来なかった。
自己嫌悪に一晩中苛まれ一睡もできなくても、学校へ行かなければならない朝は必ずやってくる。
重い体を引きずりとりあえず登校したものの、教室へは行かず屋上でぼんやりと、仁王はただ可那子のことを考えていた。
部活が始まる放課後までの間に仁王が発した言葉は、朝見かけたきり一度も教室に来ない仁王を心配した丸井に対して答えた
「可那子に…嫌われた」
というひと言だけだった。
仁王の落ち込みようとその言葉に丸井は多少驚きはしたものの、別れた・ふられたと言わないところを見るとまぁ察するに仁王が何かしつこくして彼女にうざがられたってとこだろうな、とあたりを付けた。
そして実際それは当たらずと言えども遠からず、といったところだったわけだが。
授業はサボっても部活はサボらせるわけにはいかない、と考えた丸井に半ば強制的に部活に連れて来られた仁王だったが、
「仁王くん、もう少し真面目にお願いしますよ」
「ああ…すまんの」
コートでも当然、いつも通りとはいかなかった。
「ブン太」
その時、仁王・柳生ペアと丸井・ジャッカルペアの練習を見ていた幸村が丸井を呼んだ。
「ね、あれ誰?仁王みたいな顔してるけど」
「あ、ああ…ケンカしたみたいよ、愛しの可那子ちゃんと。今日は朝からずっとあんなカンジ…」
幸村の笑顔にうすら寒いものを感じながら、丸井は答える。
「…そう、分かった。ありがとう、戻っていいよ」
丸井がコートに戻るのを見送りながら幸村は何か考える様子を見せ、その後静かにコートから姿を消した。
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