ふたりの色
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日曜日。
カーテンの隙間から差し込むまぶしい光に誘われて、あたしは目を覚ました。
ドキドキしながらそのカーテンを開ける。
「わぁ…っ」
窓の外に広がるのは、一面の銀世界。
すぐにでも家を飛び出したい衝動を抑えつつ、部活へ行く支度を済ませる。
机の上の小さな包みを持って、ひとつ深呼吸。
「ん、よし!」
気合を入れて家を飛び出した。
この時間、彼もまた部活へ行くためにいつもの道を歩いているはず。
踏みしめた新雪のきゅ、と啼く声を聞きながら、彼を想いあたしは走る。
――見つけた。
見つけたけど、あたしの足はそこで動きを止める。
なぜならその姿が、太陽に照らされた白銀の世界に溶け込んでしまいそうな程に綺麗で。
あたしはしばし、足を動かす力と共に言葉も失ってしまっていた。
その時、木の枝に積もった雪が落ちて、どさりと音を立てた。
あたしははっと我に返って、その後ろ姿に声をかけた。
「仁王!」
「おお、可那子か。おはようさん」
あたしの声に反応して彼は立ち止まり、銀の髪を揺らして振り返る。
おはよう、と返しながらあたしはその笑顔に目を細めた。
「そうだ、今日誕生日だったよね?はい、これ」
あたしはなるべく何気なさを装ってプレゼントを渡す。
「誕生日おめでとう」
「お、さんきゅーナリ」
仁王はそれを快く受け取ってくれた。
包みの中には、仁王の綺麗な銀の髪に映える色とりどりの髪留めたち。
仁王がその中から赤いゴムを取り出し、髪に巻く。
ただそれだけなのに、嬉しくて涙が出そうになった。
並んで歩く途中、ふと目に入る小さな公園。
そこには誰も踏み込んでいない白銀の光景が広がっていた。
「わぁい、一番乗りっ」
あたしは嬉しくなって、そこに飛び込んだ。
「子供みたいじゃな」
くすくすと笑う声。
「失礼な!同い年でしょっ」
振り返ったあたしのすぐ後ろには、あたしの足跡を踏んで進んで来た仁王が立っていた。
向かい合って、対峙する。
今しかない、と思ったあたしは、仁王を見上げ口を開く。
「あたしね、今日雪が降ったら言おうと思ってたことがあるの」
「奇遇じゃな、俺もじゃき」
返された、仁王の意外な言葉。
少しの沈黙がその場を支配する。
次に口を開くタイミングを、お互い計りかねていた。
あたしは俯いた。
そして意を決する。
「あたし、仁王のこと…っ!」
顔をあげると同時に発したあたしの言葉は、あたしの意志とは関係なく中途半端に途切れ…気付いたらあたしは、仁王の胸に包まれていた。
「仁、王…?」
「先に俺に言わせんしゃい」
視界の隅で、赤いゴムに括られた銀の髪がゆれる。
「好きじゃよ、可那子」
耳に届く、優しい言葉。
一番欲しかった、大好きな人からの言葉…。
「あたしも、仁王…」
なんだかうまく声が出ない。
でも、ずっとずっとあたためてきたとても大切な想いだから、あたしは顔をあげた。
「仁王が好きだよ…」
仁王はあたしの頬に手を添えながらやわらかく笑う。
そしてそのまま唇が重ねられた。
冷えた唇にお互いの熱が伝わっていく。
重なった唇も、たぶん真っ赤になっている頬も、絡ませた指先も…
そして何より心が、ううん…あたしの全てが、仁王のぬくもりに包まれていくみたいだった――。
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