意外な出会い
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グリムジョーが伏せっている間、桜介と蘭丸は必死に可那子の行方を捜していた。
そしてある日、毎日神経を研ぎ澄まし精神を擦り減らしたふたりは、ようやく微かな可那子の霊圧を感じ取ることができた。
そんな時、喜びと安心に包まれながらも疲れ切ったふたりの体に感じられた、四つの強い霊圧。
その見知らぬ霊圧に驚いたふたりは
その先にいたのは、四人の女
当然相手も、ふたりの霊圧に気付き足を止める。
「何だ…ガキじゃねえか。こんな所で何してんだ」
「およしなさいな、アパッチ…大人げないですわよ」
警戒色を強めたアパッチと呼ばれたオッドアイの破面に対し、色白で髪の長い破面が丁寧な口調で言う。
「うるせえな、スンスン!」
「でも、見ない顔ですわね…どなたかの
かっとなって言い返すアパッチを無視し、スンスンと呼ばれた破面がふたりに問いかける。
「ううん、ぼくらは…」
桜介と蘭丸は初対面の破面に対しなぜか素直に、グリムジョーのこと、可那子のこと、自分たちのことをかいつまんで説明した。
現世からさらわれてきた人間だった可那子が、逃げ出した先でグリムジョーと出逢ったこと、
やがてふたりは愛し合うようになり、可那子の力から自分たちが生まれたこと、
藍染の崩玉の力で破面になりたいと望んだ可那子が、結果失敗という形で消えてしまったこと、
藍染の現世侵攻の際大ケガをしたグリムジョーは今、虚夜宮で療養中だということ、
しかしおそらく可那子は、生きているということ…。
「生きる気力を失ってしまったみたいなグリムジョーのためにも、どうしても可那子を見つけたくて…」
ふたりの話を聞いていた破面のうち、長身の破面―名をミラ・ローズといった―が口を開いた。
「グリムジョーが人間の女をかこってんのは知ってたけど、まさかそこまで骨抜きにされてるとはね…」
馬鹿にしているような言葉だったが、不思議と嘲るような響きは含まれていなかった。
「で、その可那子とかいう女は見つかったのかよ」
脇から訊ねてくるアパッチに対し、
「うん、やっと見つけたんだけど…」
と、ふたりは表情を曇らせる。
「グリムジョーに話したら、あんな大ケガしてるのに飛び出して行っちゃいそうで…」
と蘭丸が言い、次いで桜介が
「でも、生きてることを知れば元気になってくれるかもしれないって思うと、話していいのか悪いのか分からなくて…」
と困ったように続けた。
「どちらも正解、でしょうね。生きる気力も湧くでしょうけど、そこまで大事な方なら、自分なんてどうでもいいと思えますもの…」
どこか苦しげに紡がれたスンスンの言葉に、アパッチとミラ・ローズがふと目を逸らす。
「事実を話す前に、大人しくしてってちゃんと約束を…」
それには気付かなかったふりで桜介が言うと、
「あいつは人のいうことなんて聞きゃしないよ」
とアパッチが遮り、直後、
「ま、あんなヤツどうなったって知ったこっちゃないんだけどな」
と悪態を吐く。
「ま、それもそうだ」
「もう、ふたりとも…」
アパッチに同意するミラ・ローズと、ふたりを窘めるように口もとを隠したまま眉をひそめたスンスンも、言いながら歩き出したアパッチに習い歩を進める。
「…彼女たちは」
その時、三人の背中を見ていた桜介と蘭丸に、ふと声がかけられた。
ずっと黙したままやり取りを見守っていたこの女性が誰なのか、ふたりは以前グリムジョーに聞いた名前を思い出していた。
三人のうるさい女従属官を連れた
「彼女たちは、恥も外聞もかなぐり捨てて私を助けてくれたんだ。あんなことを言っていても、お前たちの気持ちは充分に分かっているはずだ」
優しげな瞳で三人の背中を見つめながら、ハリベルは言う。
そんなハリベルと三人の従属官を交互に見やりながら、桜介と蘭丸は三人が時折見せた表情や仕草の理由、そして初対面の相手に対し自分たちが何故ここまですんなり話せたのかを理解した。
護りたい人がいる。
彼女たちにも、グリムジョーにも。
もちろん、自分たちにも。
理由はただそれだけだったけれど。
それだけで、充分だった。
「アパッチさんたちはハリベル様を守りたかった…グリムジョーは可那子を、そしてぼくたちは…」
ふたりが呟き、
「そうだな、私も彼女たちを守りたいと思う。お前たちもグリムジョーと彼女を大切にすることだ」
と、ハリベルがそれに答える。
「ハリベル様ー?」
その時、先に進んでいたアパッチがハリベルを呼んだ。
「虚夜宮に戻るんですよね」
蘭丸の問いにハリベルは、とりあえずな、と短く答え歩き出す。
それを聞いたふたりも
「待って、アパッチさん!ぼくらも…」
と、少し先にいる彼女たちを追う。
「気持ち悪いな、さんとかつけんじゃねえよ」
アパッチは呼び方について文句は言うが、ついてくるなとは言わなかった。
ハリベルとふたりの合流を待ち、再び歩を進める。
そして、思い出したように口を開く。
「ま、いざとなったら死に損ないのケガ人くらいあたしが止めてやるから、安心しなよ」
口は悪いけど、それを補って余りある優しさがその言葉からはあふれていた。
そしてミラ・ローズもスンスンも、それを茶化すようなことはしなかった。
桜介と蘭丸は温かな気持ちで、ハリベルと三人の従属官と共に虚夜宮への道を歩いた――。
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