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やっと戻って来やがったか…。
グリムジョーはいつものように可那子の霊圧をその身に感じながら、自室のソファに体を投げ出しぼんやりと時を過ごしていた。
切れた唇がちりっと疼く。
「…ち」
小さく舌打ちするとその傷を指で押さえる。
と、そのままグリムジョーは動きを止めた。
入口の扉をじっと見つめる。
「…寝首でも掻きに来たか」
暫くの間の後、グリムジョーは扉の外側に向けて言葉を発した。
グリムジョーには、可那子が扉の前に立っていること、そしてその霊圧の揺らぎが手に取るように分かる。
また暫く待つ。
可那子がそこから逃げ出す気配はない。
「――…入れよ」
グリムジョーが小さく言うと、遠慮がちに扉が開く。
「珍しいじゃねえか。てめえが自らここに来るたぁな」
言いながらグリムジョーは体を起こし、可那子を真っ直ぐに見る。
花浅葱色の瞳に見つめられて萎縮してしまいそうになりながらも、可那子はやっとの思いで口を開いた。
「外に…出たいの。…連れてってくれる…?」
「ひとりで…じゃねえのか」
可那子の言葉に僅かに怪訝そうな表情を浮かべたグリムジョーが問い返すと、
「あたしたちが出逢った場所まで、あたしひとりじゃ行けないから…」
可那子はそう答えた。
可那子が何を考えているのか、グリムジョーには分からなかった。
が、しばらく可那子を見つめたまま何かを考えていたグリムジョーは、にやりと笑うと立ち上がった。
「いいぜ。…来な」
その場に立ったまま動かず、可那子に向かって手を伸ばす。
触れられることに怯えていた可那子がどれだけ本気なのかを確かめるための行動だった。
外に連れて行って欲しいとグリムジョーに頼んだのは可那子自身なのだから、可那子はその手をとらなければならない。
可那子はそのグリムジョーの態度に戸惑いともためらいともつかない表情を見せた後、軽くこぶしを握り意を決したように足を踏み出した。
そして手を伸ばせばぎりぎりグリムジョーの手に届く位置まで進むと、おずおずと手を伸ばす。
「…っ!」
その指先がグリムジョーの手の平に触れるか触れないかの所で可那子の手を強く握ったグリムジョーは、
「上出来だ」
もう逃げ出すことは出来ない可那子を見下ろし、またにやりと笑った。
初めて自分から触れたグリムジョーの手は意外なほど冷たかった。
可那子の胸が、とくん、とひとつ小さく脈打つ。
その手の冷たさに驚きながらもこの時の可那子の中には、たぶんもう自分からは決してこの手を離すことはない、という確信にも似た想いが生まれていた――。
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