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「何だ、辛気くせえツラしてやがるな」
「!…グリムジョー…」
俯いて歩いていた可那子の前に、いつの間にかグリムジョーが立っていた。
「何かあったか?」
問いかけながら可那子の顎を掴み、上向かせる。
「…っ何も、ない…」
普通に接する分には問題なくなってきていたが、あれ以来触れられることはなかったから、そのグリムジョーの行為に体が反射的に怯んでしまう。
可那子はグリムジョーの手に抗うように俯き、目を逸らした。
「何もねえなら、んなツラしてんじゃねえ」
しかしグリムジョーは、可那子のその反応に対しては咎める素振りもなく、ただそう言い捨てると可那子の横を通り過ぎて行く。
どうして、あたしをここに置いておくの――…?
可那子は振り返ってグリムジョーの背中を見つめ…しかし喉まで出かかった言葉をきゅっと呑み込んだ。
「…何だ」
グリムジョーはその場に足を止めると、振り返らずに問いかけてくる。
「何でも…ない」
可那子は慌てて踵を返し、自室へ向かい駆け出した。
聞いてどうしようというの…?
あたしはどんな答えを望んでいるの…?
自分の気持ちが分からなくなってしまった可那子はその日からふさぎがちになっていき、それでも部屋にいるよりはと宮の中庭のベンチに腰掛け、ぼんやりと過ごすことが多くなった。
「いい加減にしやがれ!こっちまで気分悪くなっちまうだろうが」
そんな日が続いたある日、見かねたグリムジョーが苛立たしげに言った。
「…気に入らないなら、追い出せばいいじゃない」
その言葉に対し、ベンチに腰掛け俯いたまま可那子は答えた。
「…何だと?」
声に僅かな怒りを込めグリムジョーが一歩詰め寄ると、可那子は立ち上がりそれに負けじと言い返した。
「気に入らないなら、さっさと殺すなりなんなりすればいいって言ってるの!」
ここに来て初めて見せる、可那子の激しい感情。
その叫びに呼応するようにグリムジョーの体が動いた。
腕を掴み、力いっぱい引き寄せると同時に身を屈め、可那子の唇に自身のそれを重ねる。
が、驚いた可那子が身じろぎしたために可那子の歯がぶつかり、グリムジョーは唇を切ってしまう。
「あ…」
唇に滲んだ血を見た可那子が今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
グリムジョーの中の何かが、ドクン、と脈打つ。
「…ちっ」
それには気付かないふりをしながら、グリムジョーは舌打ちし指で唇を拭った。
「言ったハズだぜ…てめえは俺の女だってな」
そのまま踵を返す。
「…つまんねえ独占欲かもしんねえがな」
庭と宮を隔てる扉が閉まる直前、グリムジョーの独り言にも似た言葉が可那子の耳に届いた。
振り返ると同時に扉は閉まり…可那子は驚きのあまりしばらくその扉を見つめたまま動けずにいた。
誰から?何から独占したいの?
誰もあたしを欲しがったりなんて、してないよ…?
可那子の頭の中には、大量の疑問符が浮かぶ。
初めてここに連れて来られた時…いやだと泣いたあたしを結局グリムジョーは抱かなかった。
今回のことだけじゃなく…気分がすぐれない時、ふさいでる時は必ず声をかけてくれて…。
ロリさんたちにひどいことを言われて落ち込んでた時も気付いてくれた。
それらは全て、グリムジョーの優しさ…?
態度は乱暴だけど、あたしを大事にしてくれてるの…?
不器用な、だけどそれがグリムジョーの愛の形なのだとしたら…。
庭から宮の中へと戻った可那子の足は、自然にグリムジョーの部屋へと向かっていた。
その時あることに気付き、その事実に驚いて足を止める。
今まで、どうやってこの広い宮の中を迷わずに歩けていたのか。
可那子は今ようやく、その理由に気付いた。
「グリムジョー、あたし…」