⑮
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可那子の腕の中には、桜介と蘭丸が抱きしめられていた。
一瞬の再会から何日かぶりにグリムジョーの部屋に入ることを許され、きちんとした可那子との再会を果たせたふたりも可那子にしっかりとしがみつく。
ソファに腰かけたグリムジョーは脚に肘をつき組んだ手に顎を乗せて、何も言わずその光景を眺めていた。
そしてふと、
「グリムジョーはずっと可那子を独り占めして来たんだから、今度はぼくらの番なんだからねっ」
と、グリムジョーの視線に気付いていたずらっぽく笑った蘭丸と、それに同意するように頷く桜介を交互に見遣る。
一瞬何かを言いかけたグリムジョーだったが、ふたりの体にわずかに緊張の色が走ったことに気付くと、目を逸らし静かに立ち上がった。
そして無言のまま三人の横を通り過ぎる。
「グリムジョー?」
部屋の入口の扉に手をかけた所で足を止めたグリムジョーに、可那子が声をかけた。
グリムジョーは前を向いたまま小さく息を吐く。
そして
「お前たちには…」
と扉を開けながら小さくつぶやくように言うと、続けられたグリムジョーの意外な言葉に桜介と蘭丸は驚き、顔を見合わせた。
「可那子を見つけてくれたこと――…感謝している」
それと同時に扉が閉まり、直後、可那子がふふっと優しく笑う。
桜介と蘭丸はその笑顔を見て、グリムジョーの出て行った扉に視線を向けた。
そして理解する。
粗野で乱暴だけど、不器用な優しさと自分自身も戸惑うほどの大きな愛を持っているのがグリムジョーで。
そのグリムジョーこそが、可那子が命をかけて愛した男の人なんだということを。
「ね、可那子」
桜介と蘭丸は可那子をじっと見つめて口をそろえた。
「ぼくたちだって可那子を愛してるんだよ」
「うん、あたしも」
それを聞いた可那子が嬉しそうに笑う。
そしてそれを見てえへへ、とはにかんだふたりが
「でもグリムジョーのことも、もっと大好きになれると思うんだ」
と続けると、その言葉に目を細め
「ありがと…」
とふたりを抱きしめた。
「ぼくたちもお礼を言わなくちゃ、可那子を連れてふたりで帰って来てくれてありがとうって!」
「桜介…蘭丸…」
その後そう言ったふたりに手を引かれて立ち上がった可那子に、ふたりは笑顔を向けた。
「だから行って?やっぱり可那子はグリムジョーと一緒じゃなきゃね」
言いながら、部屋の扉の方へ向かって更にその手を引く。
そんなふたりの優しさを受けた可那子もまた、
「分かった。じゃあ、グリムジョーを迎えに行ってくるね」
とにこっと笑い、扉を開けた。
これからの幸せな日々を予感しながらふたりは、駆け出す可那子の背中を嬉しそうに見送るのだった。
そしてグリムジョーの霊圧を追いかけた可那子は、扉が開け放たれたままの庭への出口で足を止めた。
ベンチに座る、後ろ姿。
それを見つめながら静かに笑んだ可那子は、その霊圧に気付いているはずの背中に向かってゆっくりと足を踏み出した――。
→あとがき
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