⑭
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その後グリムジョーは、ただただ可那子を抱いた。
がむしゃらにその体を抱き、時には眠ったが可那子が身じろぎすると目を覚まし、また体を重ねた。
ふたりとも何度目か分からない絶頂を迎えた後、グリムジョーの腕の中から体を起こした可那子が水差しの水をひと口呑み、小さく息を吐く。
「初めてグリムジョーに抱かれた時みたいだね」
可那子の横に体を起こし愛おしそうに左頬をなでるグリムジョーの手に、自らも頬をすり寄せながら可那子は言った。
「見た目はだいぶ違うがな」
そう言いながら、反対の頬…右頬の仮面をグリムジョーは手の甲で触れる。
そして視線を落とした先には、腹部に開いた孔。
可那子はその孔を手の平で覆うようになで、ふふ、とやわらかく笑う。
「そんな風に望んだつもりもなかったんだけど…見事にお揃いになっちゃったね」
やわらかい笑みの中に少し照れたような表情がにじむ。
グリムジョーの腕は、可那子を抱き寄せ強く抱きしめた。
「…お前にまだ言ってなかったことがあったな」
可那子を抱きしめたまま、グリムジョーはゆっくりとそう言った。
そしてその言葉に顔を上げた可那子を見つめ、
「言うなと言いながら、自分だけ言い逃げしたヤツもいるが」
とわずかに口角を上げ呆れ気味につぶやく。
「…あ…」
グリムジョーの言わんとすることを理解した可那子は少し困ったように、そして少し哀しげに、微かな笑みを浮かべた。
そんな可那子をグリムジョーは見つめ、目を細めてふ、と笑った後
「まあ、んなことはもうどうでもいいんだがな。なくしたもんがこの手に返ってきたんだから」
そう言いながら、可那子の前髪をくしゃりとかき上げた。
「グリムジョー…」
花浅葱色の瞳が、見上げた濃茶色の瞳を優しく射すくめる。
そのままゆっくりとした動作で、グリムジョーの指先は絡めた可那子の前髪を梳き、耳の後ろを滑る。
親指が唇をなぞった後、その手の平はいつの間にかあふれた涙で濡れた可那子の頬を包み込んだ。
「可那子…」
形のいい唇が目の前の愛しい者の名を呼ぶ。
そしてまっすぐ、グリムジョーは自分の想いの全てを乗せて言葉を紡いだ。
「お前を、愛している」
可那子の瞳からは更に大粒の涙がこぼれ落ちる。
しかし可那子もまたまっすぐグリムジョーに向け、自分の心の全てをその言葉に乗せた。
「あたしも、愛してる…!」
頬に添えられていたグリムジョーの手が可那子を抱き寄せるのと同時に、可那子の腕もまたグリムジョーの体に回される。
「もう二度と…俺から離れるんじゃねえ」
グリムジョーの声が、可那子の中に静かに響く。
「…うん…」
可那子は小さく答え、その手が自分の死覇装を握りしめるのを感じ取ったグリムジョーは、可那子を抱きしめるその腕に力を込めた。
破壊するためだけに産み出されたグリムジョーの中に芽生えた、未知の感情。
可那子との優しい日々の中で、それを愛と知り、愛するということを知った。
そして――…
「まあイヤだっつっても離さねえがな」
頬に触れるやわらかな髪を梳きながらグリムジョーは、何かを―愛しい者を―護りながら生きていくのも悪くない、と心穏やかに思うのだった――。
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