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一方グリムジョーの部屋に残された桜介と蘭丸は、可那子の霊圧が消えた瞬間体をびくんと震わせ、目を見開き顔を見合わせた。
そしてふたりともゆっくりとした動作で自らを抱きしめ、再び目線を合わせた同じ顔の相手と強く抱き合う。
「可那子…」
どちらかの、それとも両方の口からか、小さくその名がこぼれ落ちた。
グリムジョーが部屋に戻ると、それを待っていた桜介と蘭丸はグリムジョーに駆け寄った。
が、どこにもぶつけることの出来ない怒りと抗いようのない哀しみとが綯い交ぜになったような空気を纏うグリムジョーの様子にびくっと足を止める。
わずかにふたりの方へ視線を動かしたグリムジョーだったが、そのままどさりとソファに体を投げ出した。
腕が力なく床に落ちる。
「…っ!」
その手をそっと握った桜介はそれがひどく冷たいことに驚き、切なげに唇をきゅっと噛むと離しかけた自分の手に力を込めた。
その時、隣でそんなグリムジョーと桜介を見ていた蘭丸が口を開き何かを言いかけたが、桜介は小さく首を振りそれを制する。
でも…、と言いたげな表情を浮かべた蘭丸も、結局そのまま口をつぐむと桜介の横に寄り添い、桜介の手をきゅっと握った。
「くっ…、は、ははっ!」
しばらくの後、乾いた笑いをこぼしながらグリムジョーが体を起こした。
桜介の握った手にも力が込められ、その小さな手から離れて行く。
「何かを創り出そうなどと考えるから、おかしくなっちまう…」
顔面に自らを嘲るような笑みを貼り付け、独り言のように紡がれる言葉。
「グリムジョー…?」
不安そうに呼びかけるふたりの声も耳に届いていない様子で、
「やはり俺には…」
と、ゆらりと立ち上がったグリムジョーのその口もとは、狂気へと変貌していた。
「破壊することしか許されちゃいねえらしいなぁ!!」
「待って!グリムジョー!!」
桜介の声は、グリムジョーの慟哭にも似た叫びの直後に起こった轟音にかき消された。
ふたりはけほけほと咳き込み砂煙に沁みた目をこすりながら、虚夜宮の外に面した壁にできた穴から飛び出す。
恐らく帰刃したであろうグリムジョーの霊圧を遠くに感じながら、しかし到底それを追うことも出来ず、ただふたりは手をつなぎ彼方を見つめ…途方にくれた。
その日から四日目の夜――。
虚夜宮に戻ったグリムジョーは可那子と過ごした優しい日々の面影も失い、恐らくはそれ以前の…破壊のみを生きがいとしたグリムジョーに戻ってしまっていた――。
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