⑪
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桜介と蘭丸をグリムジョーの部屋に残し、可那子とグリムジョーは藍染の宮へ向かった。
「良く来たね、ふたりとも」
にこりと笑いながらふたりを歓迎した藍染の傍らには、藍染と同じ裏切りの死神である東仙要と市丸ギンが控えていた。
「早速だけど、始めようか。さあ可那子、ここへ」
藍染が示したそこには床からせり出したような細長い筒状のケースがあり、その先端にそれはあった。
禍々しいとさえ思える霊圧を放つ、崩玉――…。
「おい…」
グリムジョーに向かって小さく笑みを浮かべて見せ、何も言わずに静かに足を踏み出した可那子にグリムジョーが声をかけるが、
「グリムジョー、君は近付かない方がいい。この方法は虚にとっては危険なんだ。せっかく彼女が破面になれても、君がいなくちゃ意味がないだろう?」
藍染の言葉がそれを遮る。
「…ちっ」
小さく舌打ちし、グリムジョーは半歩後ろに下がった。
「気持ちを楽にするんだ。苦しかったり、痛かったりすることはないからね」
崩玉の前に立った可那子は、藍染の言葉に小さく頷き、目を閉じた。
それを見た藍染が崩玉を手に取り自らの霊力を注ぎ込むと、キュゥ…と崩玉から放たれた光が可那子を包み込むように球体を作り、浮き上がる。
球体の中からその壁に手をつき戸惑ったように外を見る可那子に
「まだ、私の声が聞こえるね?」
と藍染が問いかけた。
その問いかけにこくりと頷いた可那子に、
「もう少しで君の意識はなくなり、細胞の組み換えが始まる。次に目覚めた時、可那子、君はもう破面だよ」
と、藍染が説明をした直後だった。
「!!」
可那子の体がびくんと震え、可那子はその表情を苦しそうに歪ませた。
藍染の言葉通り、虚であるグリムジョーの体を蝕むような崩玉の力にその場を動けず声を発することもできなくなってしまったグリムジョーの目の前で、可那子は球体の中で自分の胸もとを握りしめながら前屈みに倒れた。
100%の仕事をするわけではないと口先では謙遜してみせながらも、崩玉の力に絶対の自信を持っていた藍染の顔にも少なからずの動揺が走る。
と、その時。
球体が弾け、可那子の体は落下し床にたたきつけられた。
金縛りから解けたようにグリムジョーが可那子に駆け寄り抱き上げると、苦しげに瞳を開いた可那子は弱々しく手を差し伸べる。
震える指先で自分の頬に触れたその手をグリムジョーが強く握りしめると、可那子は哀しそうに瞳を曇らせ、口を開いた。
「…自分からは、この手…絶対に離さないって、決めてたのに…、ごめんね…」
「可那子…?」
グリムジョーが呼びかけると、可那子は微かに笑みを浮かべ…言葉を紡いだ。
「あたしの、豹王…、愛してる…グリムジョー…」
その言葉を残し、どん、という衝撃と共に可那子の体は消滅した。
「どういう、ことだ…」
ついさっきまで可那子の手を握っていたはずの自分の手を見つめながら、しばらくの間呆然としていたグリムジョーの喉から声が絞り出された。
そしてゆらりと立ち上がった次の瞬間
「どういうことだって聞いてんだよ!藍染!!」
言葉と共に、手の平の崩玉を見つめたまま考え込んでいた藍染に向かって走り出す。
が――…。
「止まれ、グリムジョー」
傍らに控えていた東仙が、斬魄刀に手をかけ立ちはだかった。
「これ以上進むことは許さない」
「…どけよ、東仙…ぶっ殺すぞ」
唸るような声でグリムジョーが威嚇する。
東仙が斬魄刀の鍔をカチリと鳴らした時、
「或いは…」
と、藍染が今にも斬魄刀を抜き放ちそうなふたりの覇気を殺ぐように口を開いた。
ピクリと肩を震わせグリムジョーが藍染を見る。
「いや、違うな。彼女はまだ“人間”だった…」
しかし続いた藍染の言葉は、およそグリムジョーを救ってくれるものとはかけ離れていた。
そして、藍染の言わんとしたことをグリムジョーも理解した。
可那子が既に魂魄の状態となっていたならその可能性も考えられたが、先ほどまでの可那子は、まだ人間のままだった。
つまり、どこか違う場所で可那子が虚として生まれ変わった可能性は、ないということ――。
「……」
斬魄刀の柄にかけていた手を下ろし、グリムジョーは何も言わず藍染の宮を出た。
自分の宮に戻る間、探査神経を全開にして可那子の霊圧を探るが、そこにひっかかる気配はなく…
「…っ!!」
立ち止まったグリムジョーは力任せに壁を殴り、砕かれた壁などには見向きもせず自宮へと戻った。
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