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可那子が泣いた夜、グリムジョーは可那子が眠ってから藍染の元へ出向いていた。

崩玉の力で人間を破面にすることは可能か――と、藍染に問うために。


部屋に戻る道すがら、藍染の出した答えを可那子に伝えるかどうかグリムジョーは迷っていた。


100%ではない可能性に、可那子の命を預けることができるのか。

万が一失敗に終わった時、可那子は…そして自分はどうなってしまうのか。

そう思う反面、自分たちを産み出したその崩玉の力に賭けてみたいと思う気持ちがあるのも、また事実だった。


そもそも可那子がグリムジョーがいないことに気付いていなかったなら、藍染の元へ行っていたことすら黙っていることも可能だった。


しかし部屋に戻ると、ベッドから落ちたのか降りたのか、床でうずくまり可那子は泣いていた。

傍らには、桜介と蘭丸が今にも泣き出しそうな顔で可那子に寄り添っている。


「ね、ほら可那子、グリムジョー帰ってきたよ」

いち早くグリムジョーに気付いた蘭丸が、可那子の袖を引く。


ゆっくりと顔を上げた可那子の濡れた瞳がグリムジョーを捉えた。


「グリムジョー…」

可那子はますます涙を溢れさせ、

「グリムジョーがいなくなっちゃう夢を見て…あは、ごめんあたし…子供みたい…」

と、泣きながら笑う。


グリムジョーは何も言わずに可那子を抱きしめた。

「ごめん…ごめんね、グリムジョー…」

「いいから…謝んじゃねえ」

グリムジョーは可那子を強く抱きしめながら、ぎりっ、と歯噛みした。


可那子が自分の望みをはっきりと口にしたこの時点で、可那子の心はもう限界だった。

このまま壊れてしまうんじゃないかと思ったことが、グリムジョーの心を決めさせる要因となった。





「…お前らもここにいろ」

そっと部屋を出て行こうとしていた桜介と蘭丸に向けて、グリムジョーが言う。


グリムジョーの意外な言葉にふたりは驚いたように足を止め、顔を見合わせる。

そのままぱたぱたと可那子の元に戻り、桜介はグリムジョーに、蘭丸は可那子にしがみついた。


「…ひとつだけ、確実じゃねえが方法はある」

グリムジョーは、絞り出すように言った。

「それを確かめに行って来た…」


「うそ…」

可那子が呟きながら顔を上げ、桜介と蘭丸もグリムジョーの顔を見上げた。


「嘘じゃねえ…が、その前に…」

グリムジョーは、可那子の頬の涙を少し乱暴に拭う。

「泣きすぎだ。みっともねえツラしやがって」


「ひど…」

可那子はグリムジョーのひんやりとした手の温度を感じながら、小さく笑って見せた。


そんな可那子をグリムジョーはどこか安心したように見つめながら、

「それにこいつらにも…いつまでもこんな顔させとくな」

泣き出しそうな顔をしたままの桜介と蘭丸を、ぐいと可那子の方へ寄らせた。


「いいんだ、ぼくたちは…」

可那子に心配かけまいと慌てて言う蘭丸と、その横で頷く桜介を

「…そうだね、ごめんね、ふたりとも…でも、ありがとね…」

言いながら、きゅ、と抱きしめる。


「大丈夫だよ、可那子…ぼくたちはもう、さみしくないよ…」

ふたりも可那子に抱きつき、小さな声でそう呟いた。





「お願い…してみようよ。なんか大丈夫な気がするの。成功率はあたし次第、なんでしょ?」

藍染に確かめたその事実をグリムジョーが告げると、可那子は静かに言った。


その可那子の言葉は、グリムジョーの予想の範疇を越えてはいなかった。

しかし、はいそうですかと藍染に頼みに行くわけにもいかない。


「確かにここに来てからお前の霊力は強くなってるが…そんな不確かな方法で、もし…」

グリムジョーが珍しく気弱な発言をする。


そんなグリムジョーに、可那子はもうひとつの現実を語った。

「でも、今のままだとほんの数十年の間に確実にあたしはいなくなるんだよ。それもどんどん歳をとってね」

可那子…」

「あたしは、グリムジョーを置いていくことに自分が耐えられない」


そしてグリムジョーを真っ直ぐに見つめると、グリムジョーの心にもあったその想いを口にした。

「だから…賭けてみたいの」


それは可那子のただひとつの望みであり、グリムジョーの願い。


「ぼくたちは、信じて待つよ」

可那子をそっと抱きしめたグリムジョーの横で桜介が言い、

「じゃあ、グリムジョーも帰ってきたことだし、ぼくたちはもう寝るね」

蘭丸が可那子の頬に口づける。


「あ…今日は一緒に…っ、ん…」

抱きしめられたままふたりに向かって手を伸ばした可那子の唇を、グリムジョーがふさいだ。


それを見たふたりは、ほっとしたような、そしてどこか大人びた優しい笑みを浮かべ部屋からそっと出て行く。


「ガキが生意気に気利かしたつもりなんだろ。甘えとけよ」

言いながらグリムジョーは、可那子を抱き上げベッドに腰掛ける。


グリムジョーの膝の上で、頬に添えられたまだ少し冷たく感じられるグリムジョーの手を可那子はそっと握った。

「大丈夫だよ、グリムジョー…あたしだって、結構強くなったんだから」


可那子の言葉に、グリムジョーはくくっと笑って言う。

「俺がいなくてビービー泣いてるヤツのどこが強いんだか知らねえがな」


「もうっ」

グリムジョーの言葉に頬を膨らませる可那子を見て、僅かながらも落ち着きを取り戻した様子にグリムジョーも少しだけほっとしていた。


「ね、グリムジョー」

可那子がふわりとグリムジョーの首に腕をまわし小さく言う。

「ぎゅっ、て抱いてて?もうあんな夢、見ないように…」


「…ああ」

グリムジョーは可那子を強く抱きしめ、抱き合ったふたりはそのままベッドに倒れ込んだ。


自分を抱きしめるグリムジョーの手が少しずつぬくもりを取り戻していくのを感じながら、可那子はゆっくりと優しい眠りへと誘われていった――…。


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