①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少女は白月のもと、乾いた白い砂漠の中を何かから逃げるように彷徨っていた。
時折足を取られては膝をつき、慌てて立ち上がりまた歩き出す。
その時。
少女は弾かれたようにその白い月のみが浮かぶ空を仰いだ。
得体の知れない重圧が少女の全身を襲う。
「何…?」
大気が震え、その重圧そのものを纏ったような何かが猛スピードで近付いてくる。
その何かを視界に捉えたと思った直後には、それは目の前まで迫っていた。
明らかな、殺意。
――を感じた刹那、それは目の前から消えた。
「…っ」
背後で起きた爆風と砂煙に押され、少女は前のめりに転がった。
激しく咳込みながらも逃げようともがいているうちに、砂煙が晴れてくる。
少女は、そちらに目をやった。
その砂煙の向こうから現れたそれは、およそ人間とはかけ離れた風貌の、恐らく…男だった。
獣のような大きく尖った耳、その鬣を想わせる水浅葱色の長い髪に鋭い爪。
腹部に孔を持つスレンダーなボディには、長い尻尾がまるで意志があるかのように動いていた。
鋭利な刃物のように輝く瞳に射竦められ、少女は動くことはおろか、声を出すこともできなくなってしまった。
「やっぱりか。おかしな霊圧振りまいてるヤツがいると思って来てみりゃ…女、てめえ人間だな?」
目の前に立ったその男が問いかけてくる。
人間と人間以外の定義が見出せず混乱した頭で、それでも少女はこくりと頷く。
「なんでこんなとこに人間がいるのかは知らねえが…俺の霊圧に耐える人間たぁなかなかおもしれえな」
目の前の男は、満足そうに唇の端を上げた。
「おい女…気に入ったぞ。答えろ、名は何だ」
名前以外のことを口にしたら、即座に命を奪われてしまいそうな威圧感。
「可那子…」
目を逸らすこともできず、少女はやっとの思いで自分の名のみを口にする。
「よし…可那子、今日からてめえは俺の女だ。いいな」
言うなり、男は可那子の体を抱え上げた。
「え…っ、やだっ!」
男の突然の行為に可那子は抵抗を見せるが、
「大人しくしろ、俺からは逃げられねえ。ま、ここで
その男の言葉に体が反射的に震える。
「んな怯えんな。大人しくしてりゃ悪いようにはしねえからよ」
腕に震えを感じ取った男は殊の外優しい口調で言うと、次の瞬間には風を切るように動き出していた。
体に纏わりついていた重圧が少し楽になる。
ふと気付くと、男の姿は先ほどと明らかに異なっていた。
何者をも射抜くように輝く瞳は変わっていないが、髪は短くなり、顔も耳も、頬に残る仮面のようなものを除けば人間のそれと大差なくなっていた。
1/2ページ