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「阿近さぁん…」
「…またふられたのか」
こいつ―可那子―は、失恋をすると決まって俺の所へやってくる。
可那子は壺府と仲が良く、以前からしょっちゅう技術開発局に遊びに来ていた。
その流れで知り合いなんとなく色々と相談に乗ってやってるうちに、いつの間にか俺のラボはこいつ専用の恋愛相談所みたいになっていた。
そして同時にその日々は、俺の余裕ってヤツを徐々に削り取っていくのに十分な日々だった。
相談事のない日でも顔を合わせることはもちろんあった。
その度に募る想い。
精神的にかなりキツイ。
しかし他の男に恋してる可那子に想いを伝えることも憚られた。
そう、要はあれだ。
俺はいつの間にか――可那子を愛するようになっていた、というわけだ。
そんな俺のもとに今日もやってきた可那子。
どうやら今回は、ふられたというよりは可那子の片想いの相手に好きな人がいたとかで。
内心喜んでる最低な俺に、落ち込んでるお前をどう慰めろと言うんだ?
などという俺の心のうちを当然知る由もない可那子に、俺は言う。
「お前の気持ちは、相手が自分を好きじゃなければ諦められる程度のもんなのか?」
俺は無理だけどな、と口には出さずに続けてみる。
「そんなことないけど!」
俺の言葉を聞いた可那子は、む、と顔をしかめて言い返してくる。
「あたしのつらさなんて、研究ばっかりしてる阿近さんには分かんないでしょ!」
「……!」
その時、俺は自分自身に驚いていた。
「…俺にだって分かるさ」
普段なら、こんな簡単にキレたりしない。
たぶん、相手がこいつだからなんだろう。
「俺にだってな、惚れてるヤツくらいいるんだよ…っ!」
「やっ、阿近さん!?」
俺は可那子の腕を掴み、力づくで抱き寄せた。
「…気が狂いそうなほどな」
「阿近さ…、っ!」
無理やり唇を重ね、舌をねじ込みながら死覇装の帯を乱暴に解くと、その体を仮眠用のソファに押し倒した。
「ん…っうぅ…っ!」
唇をふさがれながら、それでも可那子は体をばたつかせ逃げ出そうと俺の肩を押す。
その手を絡め取りながら、俺は唇を可那子の首すじへと滑らせた。
そして空いた手で可那子の胸を包み込んだ時――
「いやあぁ…っ!!」
「…っ!」
耳に届いた悲痛な声に、俺の体は動きを止めた。
顔を上げると、ぽろぽろと涙をこぼす可那子の泣き顔が目に飛び込んでくる。
ゆるんだ俺の手から逃げ出した可那子は慌てて体を起こし、死覇装の前をかき合わせた。
「…悪かった」
目をそらす。
可那子は何も言わず、部屋を出ていった。
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