護りたいと思うこと
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そんな時に届けられた、いつもの文。
俺はいつものように時間より少し早く可那子の家へ向かった。
「申し訳ありませんが、今日もよろしくお願いします」
「おい、ちょっと待て」
俺は歩き出した可那子の腕を掴んだ。
「足…どうした?」
可那子の体がびくりと震えたのが、腕から伝わってくる。
「なんでもありませ…」
「なんでもない…ってこたねえだろ?」
「大丈夫ですから!行きましょう」
「駄目だ。話せ」
明らかに痛めた足をかばって歩いてるくせにそれを隠そうとする可那子の腕を離さず、少し強めに言う。
すると観念した可那子は、俯き小さく答えた。
「…合気道を…」
「は?なんでそんなもん…必要ねえだろう」
何で今さら…くらいの気持ちで口を開いた俺に、
「自分で自分を護れるようになりたいんです!」
可那子は初めて見せる表情と口調で叫んだ。
「可那子…?」
「あ…申し訳ありません…」
驚いた俺の表情を見ていつもと違う可那子はすぐになりを潜めたが、可那子はそのままゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「一角様のことは…ずっと以前から存じてました。一番隊隊舎にお茶を届ける時に時々お見かけしていましたから。
あの日助けてもらった時は、驚いたけれど…すごく嬉しかったんです。私は一角様を…ずっと、お慕いしていましたから…。
でも私はずるいんです。総隊長様からお話を通せば断れないのを分かっていながら、お願いをしました。けれどやはり申し訳なくて…。
ですが理由もなくこちらから断れば、一角様の評判を落とすことにもなりかねませんし…だったら護身術を身に付ければ、と…。
ですが結局それもうまくいかず、こんなふうに足を痛めてしまって…。本当にごめんなさい…一角様の仕事は、私を護ることなんかじゃないのに…!」
訥々と話しながら、可那子は涙を必死にこらえていた。
涙は女の武器だなんて思ってる女じゃねえ可那子に、気高さすら感じつつ俺は
「そのままでいいじゃねえか」
言って、その体を抱き寄せた。
「一角様…っ」
「必ず護るから――…俺にお前を護らしちゃくんねえか…」
柄じゃねえことはよく分かってる。
柄じゃねえこと言っちまうくらい、こいつにいかれてんだ。
案の定泣き出した可那子を強く抱きしめて…俺はそう実感していた。
忘れてたな、誰かを愛するなんて感情。
俺は戦いが好きだ。
だから十一番隊にいる。
そして死ぬ時は更木隊長のもとで、と。
だからこわかった。
戦えなくなるのが。
こわかった。
護りきれないかもしれないということが。
だが、もうやめだ。
考えるのも、迷うのも。
俺は可那子を愛してる。
護ると決めた。
死ぬなら隊長のもとで。
でもその時こいつを思い出せたら――隊長のもとで戦い続け生き続けることができるんじゃないかと、十一番隊の奴らに聞かれたら腑抜けたかと言われそうな感情すら受け入れることができる。
けどまあ、あれだ。
どうせ死ぬならこいつのために命かけるのも悪くねえとも思ってる。
そう言うときっと嫌がるから、口には出さねえけどな。
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