ここにいることの意味
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「ね、この6年に何があったか…気になる?」
可那子は、一角の背中に向かって問いかける。
「鬼道衆にはね、行かなかったんじゃない…行けなくなったの」
しかし一角の答えを待たず、可那子は独り言のように言った。
それを聞いた一角は、体を起こし可那子に向き直る。
「…どういう意味だ…何があった?…入学してから音信不通になった理由もそこにあんのか?」
可那子は真央霊術院に入学してすぐ、鬼道衆の上官にその才能と容姿を見染められた。
直後、ほぼ無理やり卒業、鬼道衆に入隊させられ、その上でその上官に結婚を迫られた。
可那子が頑として首を縦に振らなかった為、結婚を承諾するまではとほぼ監禁状態に置かれ、その間可那子は何度も脱走を試みては連れ戻されていた。
その日も可那子は脱走した。
そしてやはり連れ戻されそうになっていた所を、たまたま通りがかって助けてくれたのが十一番隊隊長の更木剣八と副隊長の草鹿やちるだった。
事情を知った剣八は十三番隊隊長・浮竹十四郎に相談し、十四郎が霊術院に掛け合ってくれた。
そのおかげで卒業を取り消してもらい、無駄になった2年を取り戻すように4年でカリキュラムを終えて卒業、晴れて十一番隊へと入隊することができたのだった。
「…他の男ってのは、そいつか」
黙って可那子の話を聞いていた一角が口を開いた。
「…そう」
「そいつだけか」
「…うん」
一角はため息を吐き頭を掻く。
「馬鹿野郎、何で俺に助けを求めねえんだ」
「だいぶ騒ぎになったからね、噂が先に届いてたらと思うと…怖かった。ほら、噂ってどんな尾ひれが付くか分かんないでしょ、だから…」
「…そんなとこだけしおらしくなるなよ、調子狂うだろ…」
俯いた可那子を、一角は無造作に抱き寄せた。
「十一番隊に志願する時に、浮竹隊長に相談したの。浮竹隊長が大丈夫だよって言って下さったからここに来れたんだけど…心配かけて、ごめんね…」
「いや、俺も…もっとちゃんとお前を捜せばよかった…すまねぇ」
可那子の肩に着物をかけてやりながら、一角もまた可那子に詫びた。
「でも、お前は十一番隊に置いとけねえ」
それとこれとは話が別だと、一角は言う。
「今はいくらでも言えるさ。お前を護ってやるってな。だが、戦いになったら俺はお前を忘れるかも知れねえ」
一角は正直な自分の気持ちを語り始めた。
「俺は、更木隊長の元を離れるつもりはねえからな。俺の望みはひとつ…」
「あの人の下で戦って死ぬ」
その一角の望みを可那子が口にする。
「可那子…」
一角が可那子を見ると、可那子は
「知ってる。でもだめ。一角は死なないもの。ついてるから」
と、にこりと笑う。
「『負けを認めて死にたがるな。死んで初めて負けを認めろ。負けてそれでも死に損ねたら、そいつはてめぇがついてただけだ。そん時は生き延びて、てめぇを殺し損ねた奴を殺すことだけ考えろ――』」
可那子は以前一角が話してくれた、一角が剣八についていくことを決めるきっかけとなった言葉を覚えていた。
そしてまたにこりと笑い、
「…ね?一角はついてるから死なない。死なないから、負けない」
と言い切った後
「あたしは、一角と一緒に生きたい。でももし万が一死ぬ時もやっぱり一緒がいいから、絶対十一番隊にいる!」
「…っ!」
可那子は一角に飛び付き、一角は可那子を抱き止めながらかろうじて体勢を保つ。
一角は小さくため息をつくと
「分かったよ…お前にゃかなわねえな、まったく」
と諦めたように笑い、
「だったらもう二度と、俺から離れるんじゃねえぞ…」
そう言いながら、その唇に優しいキスをするのだった。
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