物好きなのは
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初めの約束通り、剣ちゃんの好きな時に抱ける便利な女みたいになって数年が過ぎた。
もちろんどんな関係であれ、剣ちゃんに抱かれるのはすごく気持ちいいし、幸せ。
そう、抱かれてる時は、ね。
だけど、終わったあとがつらくて。
剣ちゃんに愛されてるわけじゃないんだって思い知らされて…虚しさだけがあたしの中に残る。
こうなることは初めから分かりきってて、それでもこっちを選んだのはあたし自身。
これ以上を望む資格がないことだって分かってる。
でももう、心が限界だった。
だからあたしは今日、断腸の思いで決心を固めた。
「剣ちゃん、誕生日おめでとう…」
「なんだよ、祝ってくれてるツラじゃねえな」
そう、今日は剣ちゃんの誕生日。
プレゼントの包みを差し出したあたしに剣ちゃんは言った。
「そんなことないけど…」
「けど…なんだ、言えよ」
口ごもるあたしに畳み掛けてくる。
「…もう、終わりにしたいの」
剣ちゃんが引き止めてくれるとか、そんなこと絶対期待しちゃダメ!
自分にそう言い聞かせてから意を決してそう言ったら、剣ちゃんは
「そうか、ようやく愛想が尽きたか」
と、薄く笑った。
「違う!剣ちゃんが好きだから、だからつらくて…!」
「好きだの愛してるだの、そんな感情は俺にはねえ」
あたしの反論を遮るように繰り返される言葉。
胸が締め付けられて、何も言えなくなる。
もう逃げ出したい、と思った時だった。
「だが、俺が抱くのはお前だけだ。他のヤローの形なんざ気持ち悪いだけだからな」
「…剣、ちゃん…?」
剣ちゃんの口からこぼれた言葉にあたしは耳を疑った。
「これからもお前だけでいいと思ってたんだが、まぁ終わりにするってんなら…」
「しない!終わらない!そんな告白、今するなんてずるい!!」
信じられない、剣ちゃんの口からこんな言葉が聞けるなんて!
でも、夢じゃないよね?
あたしは慌てて剣ちゃんの言葉を遮った。
「ああん?告白じゃねえっつってんだろ」
剣ちゃんは相変わらずそんなことを言うけど、あたしにはもう通用しないよ?
「もう仕方ないな、じゃあそういうことにしといてあげる」
「うるせえよ」
「ふふ」
困ったな、顔が勝手に笑っちゃう。
と、そんなあたしをじっと見てた剣ちゃんがあたしの方に手を伸ばした。
「…来いよ、今日はお前が上だ」
掴まれた腕をぐいっと引かれる。
「祝ってくれんだろ?誕生日」
目の前に迫った剣ちゃんの顔。
その唇が不敵に笑う。
やっぱり剣ちゃんを好きになってよかった。
少し弱音吐いちゃったけど、全部投げ出してしまわなくてよかった。
これからもあたし、剣ちゃんを好きでいていいんだね。
「うんっ」
勢いよく剣ちゃんに抱きついたら、プレゼントの包みからこぼれた金色の鈴が小さく音を立てた――。
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