そのままの君でいて
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最近可那子の様子がおかしい。
普段から少し抜けたところがあるのは、幼なじみのよしみでよく知っている。
しかしここのところはそれに輪をかけておかしくなっていて、ぼんやりしていることが多くつまらないミスも増えている。
幸いここ最近は
「おい可那子、ここんとこちょっと変だぞ。いつ虚が出てもおかしくねえんだ、いくら三席だって油断すればやられちまう。もう少し気合入れろ」
「え?あ…、うん」
苦言を呈してもこの有様。
相変わらずほうけている。
自分で言うのは間抜けすぎかと思いつつも、俺は言葉を続けた。
「その様子じゃ、今日が何の日かも忘れてるみてえだな」
「今日…?」
ため息をつく俺を見ながら考えること数秒。
「……!!」
可那子の顔色が変わった。
「やだ、ごめんあたし…!」
慌てて立ち上がりそのまま部屋を出て行こうとする。
「おい、どこへ…」
「プレゼント!まだ用意してないっ」
「いらねえよ」
どうやらはっきりと思い出した様子の可那子を俺は引き止めた。
「…え?」
「ああ、悪い言葉が足りなかったな」
俺の言葉に不安げに足を止めた可那子に俺は言葉を付け足す。
「物はいらねえって言ったんだ」
「…それってどういう意味…?」
しかし返された可那子の言葉に、俺はもうひとつため息をつく。
「にぶい女…」
「え?」
「分かってねえのか…俺が誰のことを好きなのか」
確認のためにそう言ってみたら、とたんに可那子は泣き出しそうな表情になる。
「松本…副隊長…?」
「はあ!?」
その口から出た名前に俺は愕然とした。
なんでここで松本の名が…!
「だって冬獅郎、巨乳好き…なんでしょ?」
「…!!誰だ、んなこと吹き込んだのは…!!」
脱力感に苛まれ、同時に可那子の様子がおかしかった理由を理解した俺の前で、可那子は俯き呟いた。
「あたし…胸ないし、髪も短いし、全然女らしく…」
「――お前が!」
俺はそれを遮るように口を開く。
「お前がそのままのお前でいてくれたら…俺は他に何も望まねえ」
「冬獅郎…?」
「まだ分からねえか?俺が誰を好きなのか」
戸惑う可那子にたたみかける。
と、ようやくこの鈍い女にも理解できたようで、その頬が真っ赤に染まっていく。
「で、他に言うことは?」
「あたしも、冬獅郎が好き…!」
「やっと言ったな、まったく」
欲しかったやつからの欲しかった言葉。
今はそれだけで十分満足だった俺に、
「それから…」
と、可那子は顔を近付けてきた。
「誕生日おめでとう、冬獅郎」
頬に触れたやわらかな感触と、直後自分のしたことに更に真っ赤になる可那子。
「サンキュ…」
頬が緩んでしまうのを隠すために、俺は可那子を強く抱きしめた。
(12,12,20)
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