勝負の行方
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「さ、もっと呑んで下さい」
「じゃあお返しだよ」
と、楽しそうに酒を注ぎ合うふたりの姿を眺めながら、浮竹は体に障らない程度にちびちびと呑んでいた。
時折、手酌で酒を注ぐ浮竹に気付いた可那子が慌てて徳利を差し出す。
浮竹もありがとう、と酒を注いでもらい、可那子に、そして京楽に注いでやる。
そんなことを繰り返すうちに夜も更けて行きふたりはいい感じに出来上がっていった。
「もっと、呑んれくださいよー」
すっかり呂律の回らなくなった可那子がおぼつかない手つきで徳利を差し出し、
「あれ?これもう空れすねぇ」
とそれをひっくり返し中を覗きこんでいる。
そんな可那子をまだ幾らか余裕のありそうな表情で見ていた京楽が
「そろそろ降参した方がいいんじゃないの~?」
と楽しげに笑うと、
「何言ってるんれすかっ!まだまだ…っ」
と、空の徳利を握りしめた可那子が京楽に詰め寄った。
――が。
「可那子ちゃんっ」
「蔵本…!」
可那子はそのままあぐらをかいた京楽の膝に倒れこんでしまった。
ふたりが心配そうに可那子の顔を覗きこむと、可那子は静かな寝息を立てていた。
ほっと息をついた浮竹が可那子の手に握られたままの徳利を膳に戻し、
「勝負あったな…」
と静かに言った。
「そうみたいだねぇ…ちょっと、残念だけど」
可那子の頭を優しく撫でながら京楽が呟くと、
「残念?」
と、その言葉に浮竹が不思議そうに京楽を見る。
「だって今回、可那子ちゃんは初めて条件を出して来たんだ。明日はボクの誕生日だし…少しだけ期待なんてものも、してみたくなるだろう?」
「京楽、お前…蔵本を?」
その京楽の答えに浮竹は、僅かに驚きをにじませながら問いを重ねた。
「…ああ、かわいくて仕方がないんだよねぇ。ほっとけないっていうか、護ってやりたいっていうかさ…」
言いながら京楽は、普段好んで羽織っている女物の着物を可那子にかけてやり、
「気付いた時はさすがに戸惑ったさ。だけど気持ちがこの子に向かって動き出してしまってね…年がいもなくって笑うかい?」
と、自嘲気味に笑う。
統学院時代からの親友の、可那子に対する真剣な想いを知った浮竹は
「いや…」
と目を伏せて首を振ると、小さく呟いた。
「俺にも、分かるからな」
うまく聞き取れなかった京楽が浮竹を見ると、浮竹は
「いや、何でもないよ」
と答え、よいしょと立ち上がる。
そして、
「じゃあ俺は帰るから、蔵本頼むな。こいつは俺の大事な部下なんだから、泣かせるようなマネはしてくれるなよ」
と釘をさした。