惹かれ合う魂

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「こんな所でどうしたのかな、子猫ちゃん」

京楽が声をかけると、可那子は弾かれたように振り返る。

そこは瀞霊廷の外れ、入り組んだ路地の一角だった。


「あなたは…八番隊の京楽春水隊長…!」

「うれしいね、ボクの名前知ってるんだ」

と京楽はにこりと笑った後、

「君のその服は、統学院…いや、真央霊術院のものだね」

可那子の着ている制服を見て、そう問いかけた。


「は、はい…」

「そんな怯えないでいいからサ。どうしたの、道に迷った?」

「あの、私、授業が終わった後よく散歩するんですけど…今日は何故か全然知らない所に来てしまって…」

「うん、確かにここらはあんまり人も来ないし…気を付けた方がいいね。…さ、じゃあ送ってあげるから、行こうか」

「申し訳ありません…」

「気にしなくていいよぉ、ボクは可愛い子には優しいんだ」

にっこり笑う京楽に、可那子もつられて小さく笑う。


とその時、京楽の視線がある物に止まった。


「それは…!」

可那子の腰に刺さっている刀を見て、京楽は息を呑んだ。


「?」

可那子はそんな京楽を不思議そうに見上げる。


「驚いたね…二刀一対型の斬魄刀か」

「分かるんですか?」

「もちろん。ボクの斬魄刀も二刀一対型だからね。でも…尸魂界にあるこの型の斬魄刀は、ボクのと浮竹のと二つしかないって聞いていたんだけど…」


京楽の言葉を聞いた可那子は、自分の斬魄刀を見つめながら口を開いた。

「この斬魄刀は曽祖父のもので…もう何千年も眠っているんです。曽祖父が亡くなる時一緒に眠りについた彼らを目覚めさせ、名を聞くことができた者に、この刀を与えると…」


すると、なるほどね…と納得したような表情で京楽は問う。

「もう、名は聞けたのかい?」


その問いに可那子は少し困ったように笑い、答えた。

「いえ、まだ…霊術院を卒業するまでが期限で…今までの中で私が一番曽祖父の血を濃く継いでいるとかで期待もされてて…あと半年しかないので、ちょっと焦ってます」


可那子の話を聞きながら、京楽は何故自分がここにいるのかを理解していた。

あまり人の来ない、この場所に。


しかし、あれこれ考えているうちに遠くに霊術院が見えるあたりに辿り着いてしまう。


「ほら、ここをまっすぐ行けば…もう大丈夫だね?」

「はい、本当にありがとうございました」

可那子は安心したように返事をし、

「うん、じゃあ気を付けて」

「はい、失礼します」

ぺこりと頭を下げた後、きびすを返し駆けて行く。


「まいったね、どうも」

その後ろ姿を見つめ、京楽は笠を目深にかぶり直し…直後、一瞬で可那子の元へと移動する。


「え!?京楽…っ」

と同時に自分の羽織でふわりと可那子を包むと、次の瞬間には小高い丘に移動していた。

「…隊、長…?」

可那子の一言は、二分割されて京楽の耳へと届く。


「ごめんよ。どうしても、このまま帰したくなくなっちゃってさ」

京楽は可那子を降ろすと、

「まず、名前を聞いてもいいかな?」

少し困ったように問う。


「私…!名乗りもせず申し訳ありません…蔵本可那子、と言います」

可那子ちゃん、か」

そんなことは気にした風もなく京楽は呟き、

「ね、可那子ちゃんは一目ぼれってほんとにあると思う?」

ふいに訊ねた。


「一目ぼれ…ですか」

「うん、ボクはね、一目ぼれってしたことなかったんだけど…さっきしちゃったみたいなんだよね、君と…出会った瞬間に」

「え?それって…京楽隊長が、私に…」

「そういう、こと…」

京楽は、可那子の唇に自身のそれをそっと重ね、

「隊…長…」

その突然の行為に、可那子は顔を真っ赤に染めた。


「いきなりごめんよ、怒った?」

固まってしまった可那子の顔を覗き込みながら、京楽は困ったように訊ねた。


「いえ、あの…驚きました…嬉しいと思う、自分に…」

俯いて恥ずかしそうに言う可那子の言葉を聞き、京楽は安心したように可那子を抱きしめた。


「冷えてきたね。でも、可那子ちゃんさえよければもう少し…」

京楽はまた自分の羽織で可那子を包み、あぐらをかいた自分の足の間に座らせる。

「た、隊長…っ」

戸惑う可那子を逃がさないように抱きしめながら、子供のように訴えた。

「もう少し、このままでいようよ」


「隊長さえよろしいのでしたら、私は…」

そう言った可那子の体から力が抜けるのを感じた京楽は

「ありがとう」

と、その腕に少し力をこめた。


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