大切だからこそ
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『二人きりの時は、イヅルって呼んでいい?あたしのことも可那子って呼んで』
イヅルの気持ちが分かった時から、敬語も取っ払って可那子は積極的だった。
しかしイヅルは相変わらず、可那子を名前では呼べていなかった。
「どうして呼んでくれないの?あたしのこと、好きじゃない…?」
珍しく不安そうに可那子が問いかけるが、
「そんなことないよ」
イヅルはそう答えるだけ。
「じゃあ、どうして?」
「……」
重ねて問いかけても、今度は黙ってしまう。
イヅルの様子を見ていると何か言いたいことがありそうな気もするのに、煮え切らない態度のイヅルに可那子は拗ねたような口調でつっかかってしまった。
「分かった。あれでしょ。弱ってる時に優しくされると、相手のこと好きって錯覚しちゃうやつ」
「違う!そんなんじゃない!」
しかしイヅルは可那子のその言葉を即座に否定した。
「ほんとに、そんなんじゃないんだ…」
自分を落ち着かせるようにもう一度同じ言葉を呟いてから、イヅルは言葉を紡いだ。
「何故だろう、君の名前は…大切だと思えば思うほど呼べないんだ。でもそれはきっと、僕に勇気がないからで…だから、もう少し待ってほしい。大切な君の名前だからこそ、大切にしたいんだ…ごめん」
本心からと分かる、イヅルらしい優しい言葉。
「吉良副隊長…」
思わず、可那子の口からも隊務中の呼び名がこぼれる。
すると、
「あぁっ!君には名前で呼んでほしいっ。君が呼ぶ僕の名前は元気が詰まってて好きなんだよ…って、わがままだよね…やっぱり、ごめん」
先ほどまでのシリアスなイヅルはどこへやら、焦って早口でまくし立て、最後は消え入りそうな声で謝った。
そんなイヅルをしばらく見つめた可那子は、小さくため息をついた後、
「ほんとわがまま!へたれ!意気地なし!根性なし!」
わざと真面目な表情で
「そ、そこまで言わなくても…」
イヅルは当然困ったようにオロオロするが、
「でも大好きっ!!」
「うわ…っ」
直後、満面の笑みを浮かべて飛びついてきた可那子に面食らい、かろうじて抱き止める。
「…知ってるよ。それがイヅルの優しさ。だから皆ついて来てくれる…」
イヅルの腕からぽんと降り立った可那子は優しく言い、
「市丸隊長なんか、いなくてもね!」
と続けて、小さく舌を出した。
「こらっ!」
冗談だと分かっているから、イヅルも本気で怒ったりはしない。
「えへへ」
可那子もまたそれを分かっているから、首を傾げてにこっと笑う。
そして、イヅルの死覇装の襟元をぎゅっと掴むと背伸びをし…
イヅルの唇に、ちゅっとついばむようなキスをした。
「蔵本くん…っ」
そのまま可那子は、顔を赤くして焦るイヅルの胸にぽすんと額を押し付ける。
「今は、待つ。キスもしたかったらあたしからする。でも、あんまり待たせちゃいやだよ?」
少し照れたように言う可那子がとても愛しいと思った。
イヅルの両腕が、そっと可那子を包み込む。
「…うん、ありがとう。でもこれだけは言っておかなきゃね」
イヅルはありったけの心をこめて、可那子に伝えた。
「僕は、君が大好きだよ…」
→おまけ。