答えはひとつ
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普段の稽古は六番隊の稽古場を使うが、たまには気分を変えようとその日俺は可那子を流魂街の山に誘った。
どっちかっつーと自分の気分を変えるためだったんだろうけど、山のてっぺん近くに稽古にうってつけの開けた場所があるのは確かで。
いつもの稽古場とは違った、遮るもののない広い場所で稽古をし、休憩をしていた時だった。
流れる風が心地よくて、俺はいつの間にかうたた寝をしていた。
ふと気付くと、可那子の姿がない。
「おい、可那子?」
落ちるような崖もなかったはずだが、一応霊圧を探りつつ捜しに行く。
「副隊長!」
可那子は、林の中を流れる小さな川で遊んでいた。
「冷たくて気持ちいいですよ!副隊長もどうですか?」
足袋と草履を脱ぎ捨て、死覇装の裾を捲り、素足を水に浸した可那子は俺に向けて笑顔を見せた。
…その笑顔は、反則だろ…
そんな眩暈に似た感覚に襲われながらも、
「まだまだガキだな」
俺は平静を装って言葉を絞り出した。
「もう、子供扱いしないで下さいっ!」
そう言った俺に対して、可那子は頬を膨らまして抗議の声を上げたけどな。
その後しばらく俺は、小魚を捕まえようとしたり岩の上を瞬歩を使いながら飛び回ったりする可那子を眺めていた。
俺と目が合うと、にこりと笑い手を振る。
今すぐに抱きしめてぇ…!
そんな衝動を必死に抑えた。
と、次の瞬間
「きゃ…っ」
「!可那子っ!!」
可那子はバランスを崩し、川に落ちそうになる。
刹那、俺は抱き止めた可那子と共に向こう岸に辿り着いていた。
「びっくりしたぁ…」
小さな体を地面にすとんと下ろすと、可那子はそう呟いた後ぱっと顔を上げ
「ありがとうございました、副隊長!」
と、少し恥ずかしそうに笑った。
直前まで触れたくてたまらないと思っていた体に触れてしまった俺の理性は…その顔を見た瞬間、弾けた。
「副隊長…どうかしましたか?」
黙ってしまった俺を見上げ、可那子が問いかけてくる。
「悪ぃ…もう、限界だ」
「副…!ん…っ」
俺は可那子を抱きしめると同時に、その唇にキスをした。
舌を差し込む。
びくっと震える可那子の体を押さえつけるように、抱きしめる腕に力を込めた。
可那子は抵抗しなかった。
否定でも肯定でもなく、ただ俺の死覇装を握りしめていた。
「…はぁ…っ」
唇を離すと、可那子は小さく息をついた。
「…好きだ」
俺は可那子の頭を抱えるように抱き寄せ、声を絞り出す。
「お前が好きだ。もう、どうしようもないくらいに惚れてる…」
俺の言葉を聞き、俺の死覇装を握る可那子の手に少し力が込められた気がした。
「だけど、悪かった。いきなりこんなこと…自分の気持ちをどう抑えていいか、分かんなくなっちまってよ」
俺は腕の力を緩めて可那子の体を離し
「…このザマだ」
言いながら目を逸らした。
「副隊長…」
可那子が俺を見上げる。
「マジで悪かった。赦してくれなんて言わねぇ。そいつで切られても仕方ないとも思ってる」
俺は、可那子の腰にささった斬魄刀を見ながら言った。
俺の話を黙って聞いていた可那子は、俺の視線を追うように自身の斬魄刀を見つめ
「ひとつ、訊いていいですか」
小さく問いかけて来た。
「副隊長は、これからどうするんですか?」
「これから…?」
可那子の質問の真意が読み取れず、俺は問い返してしまう。
「三択にしましょうか」
可那子は俺から一歩離れ、にこりと笑った。
そして、
「1、地獄の果てまで追いかけてやるぜ!2、これからもひっそり片想いだな…。3、もう諦めて次の恋を探すよ…。さ、どれを選びますか?」
一本ずつ指を増やして立てながら選択肢を並べ、改めて俺に訊いてくる。
突拍子もない可那子の行動に、ますます分からなくなってしまった俺は、答えに困ってただ可那子を見つめた。
すると可那子は、
「んー、じゃあ今回は大サービスで、答えも教えてあげちゃいます!」
少し考えるような素振りを見せた後、いたずらっぽく笑ってそう言うと、
「3を選んだあなたは、このコに切られてけがをするでしょう」
と、斬魄刀の鍔をカチリと鳴らしてみせた。
「2を選んだあなたは、おそらくこのまま一生片思いでしょう。そして、1を選んだあなたは…」
可那子はそこまで言うと言葉を切り、再び俺の方に一歩踏み出した。
「可那子…」
「…1を選んだあなたは、その想いに応えて尚、余りある愛を…手に入れることでしょう…」
ここまできてようやく理解した俺は、そう言ってうつむいた可那子を抱き寄せた。
「どれを…選びますか?」
可那子が、最初の質問を繰り返す。
「1に、決まってんだろ…」
そのまま強く抱きしめると、
「私も大好きです、副隊長…」
可那子の消え入りそうな、だけどどこか安心したような声が耳に届き、遠慮がちに回された手が俺の死覇装の背をきゅっと握る感触が伝わってくる。
愛しい――…と、とめどなく溢れてくるのはその想いだけ。
だけど…
「もう、追いかけねえ」
俺は、可那子を上向かせる。
「5年かけてやっと捕まえたんだ…もう二度と、離さねえ…!」
言いながら身を屈め、
「阿散井、副隊長…」
小さく俺を呼びながら瞳を閉じた可那子に、そっとキスをした…。