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「そこまでだ」
「!!」
「きゃあっ!」
突然響いた声に、ふたりは心臓が止まるかと思うほど驚いた。
「ルキア!…と朽木隊長!」
いつの間にか入り口に立っていたふたりを見て恋次が声を上げ、直後がっくりとうなだれる。
「つーか、何だよこのベタな展開…」
白哉は何故か何も言わなかったが、
「たわけ。今は隊務中だ」
ルキアのその言葉を聞き、可那子はここに来た本来の目的を思い出した。
「あのっ、朽木隊長に急ぎの書類を…っ」
持ってきた封筒を白哉に向かって差し出す。
白哉はやはり無言でそれを受け取り中身を確認すると
「――…」
疲れたようにため息をついた。
「朽木隊長…?」
「兄様…」
可那子とルキアが声をかけると、白哉は手にしたものを三人に見えるように差し出した。
達筆で記されたそれは手紙のようで、
『御協力感謝する』
という言葉と共に、
『浮竹十四郎』
十三番隊隊長の名前。
「あははっ」
それを見た途端ルキアは笑い、
「何だよ、これ…ワケ分かんねえ」
「ねえルキア、これってどういうこと…?」
ふたりはさっぱり理解できずに困っていた。
つまり、こういうことだった。
可那子と恋次が両想いなのを知っていたルキアは、しかしなかなか気持ちを伝えられない情けない恋次の背中を押してやりたいと思い、自分が所属する隊の隊長・浮竹に相談した。
すると浮竹は同じ隊長としての権限を利用し、白哉を十三番隊詰所に呼び出した。
それと同時に可那子が六番隊にお遣いに出るように仕向け、ふたりきりになれるよう目論んだのだった。
「――かくしてお前達ふたりは、浮竹隊長の策に見事にはまったわけだ」
得意気に話すルキアに、
「お前、そんなことのために隊長に迷惑を…!」
恋次が食ってかかる。
「そんなこととは何だ!そもそもお前がしっかりせぬから…」
「うるせえな、こんなお膳立てしてもらわなくてもそろそろケリ付ける予定だったんだよ!」
「ふん、どうだか。どうせずるずると先延ばしにするに決まっておる」
「なんだと!」
「あ、あの、ふたりともちょっと落ち着いて…」
言い合いを始めてしまったふたりをなだめるように可那子が言いかけたその時、
「今が隊務中だということは」
…と、それまで無言だった白哉が突然口を開いた。
可那子だけがその言葉にびくっと反応を示したのを見て
「この件について浮竹が噛んでいること、そして私も図らずも加担してしまったことで不問とする」
と、半ば諦めたような口調で続けた。
「だが、まだ隊務は残っているはずだな。…恋次、これは不要だ。さっさと処分しろ」
浮竹の手紙を恋次に渡す。
恋次は隊長の名の入ったものをゴミ箱に捨てるのは忍びないと思い、処理済みのはんこを押し書類用の廃却箱に入れた。
「ルキア、お前は浮竹に金輪際このようなことに私を巻き込むなと伝えておけ」
「…はい」
なんだかんだ言っても恋次に甘い白哉を知るルキアは、それでも一応神妙な面持ちで返事をする。
そして白哉が可那子の方を見た時、
「隊長、こいつには非はねぇ」
恋次が、可那子を白哉の目から隠すように背にかばう。
「分かっている。…一番隊は明日山本総隊長の茶会があるだろう。準備は終わっているのか?」
月いちで執り行われる山本総隊長主催のお茶会。
なんせ参加人数が多いため、前日の準備が案外重要だということを知っている白哉だからこその言葉だった。
「は、はい、お気遣いありがとうございます!」
可那子は恋次の背後から飛び出し、白哉にぺこりと頭を下げる。
「その準備に行きますので、これで失礼します…朽木隊長、阿散井副隊長。…じゃあね、ルキア」
白哉と恋次に挨拶をし、ルキアに向き直った可那子は
「ありがと。…後、ごめんね」
ルキアだけに聞こえる声で礼を言い、その後小さく舌を出してみせてから、執務室を後にした。
ルキアがこの『ごめんね』の意味を知るのは、もう少し後になるのだが。
『お前が好きだ――…』
とたとたと六番隊隊舎の廊下を歩きながら可那子はふと恋次の言葉を思い出し、ひとり赤面していた。
『何か最後はうやむやになっちゃったけど…夢、…じゃないよね』
少し心配になりながらも、ともすると笑い出してしまいそうな顔をきゅっと引き締め、軽い足取りで一番隊への道を急いだのだった。
→おまけ。