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「失礼します。朽木隊長宛てに急ぎの書類を預かって来ました」
この日も可那子は、六番隊の詰所を訪れていた。
山本総隊長率いる一番隊は、各上位席官への連絡事項なども多く一般隊士の可那子達も意外と忙しい。
上位席官ばかりの詰所は緊張するからとお遣いを嫌がる隊士も多いが、恋次に想いを寄せる可那子にとっては恋次に会えるかもしれないという願ってもないチャンス。
可那子の期待を知る由もないが、執務室の扉を開けたそこには恋次の姿があった。
可那子の胸が、どくんと脈打つ。
「おう、可那子か。隊長は今いねぇ。貸しな、戻って来たら渡しとくからよ」
「いえ、直接手渡して返事をもらって来るようにと言われてますので…」
嬉しさ半分、緊張半分で可那子は答える。
「じゃあ待ってろよ、もうすぐ帰って来るだろうからな」
「え?あ、はい…でも…」
『それって、阿散井副隊長とふたりきりってこと…!?』
至極当然の成り行きではあるが、可那子の心だけが状況についていけなかった。
「どうした?そんなとこに突っ立ってないで座れよ。茶でも淹れてやるから」
そんな可那子の動揺に気付く様子もなく、恋次は急須にお湯を注ぐ。
「そんな!副隊長にそんなことさせられません!」
可那子は焦って、恋次の手から急須を奪い取った。
「…っつ!」
すると急須の注ぎ口から零れたお湯が恋次の腕にかかり、可那子は更に焦って声を上げた。
「ああっ申し訳ありませんっ!私、なんてことを…!」
「いや、大したこと…」
「あの、すぐ冷やして下さい!私、四番隊で薬貰ってきますから…っ」
「いや、だから…」
「ちょっと待ってて下さい!」
「だから、お前が待てって」
「…いたっ!」
慌てて部屋を出て行こうとしたところを、腕を掴まれそれを強く引かれた可那子の体は軽々と反転し、恋次に抱き止められる。
その勢いで可那子は、恋次の胸に鼻を打ちつけた。
「ふ、副…隊長…!?」
突然の出来事に何が起こったかすぐには理解できず、可那子は鼻を押さえながら恋次の顔を見上げた。
「ちょっと落ち着け」
恋次はその可那子の視線を避けるように可那子の頭を自分の胸へと抱き寄せ、ため息をつきながら言う。
「…あの、あの…副隊長…すみま、せん…」
額に恋次の熱を感じ、自分が今どんな状況に置かれているか理解した可那子は、固まってしまった体から消え入りそうな声をかろうじて絞り出した。
「いや、謝んなくていいけどよ。腕も大したことねぇしな」
恋次はそう言った後、可那子を抱きしめる腕に少し力を込めた。
「副隊長…?」
「いいか、一度しか言わねぇからよく聞けよ」
戸惑い気味の声を上げる可那子を抱きしめたまま、恋次はいつになく真剣な声で切り出した。
「お前が好きだ。…俺と、付き合ってくれ」
夢にまで見た恋次のその言葉をこんなにはっきりと聞かされても、可那子はまだ信じられない気持ちで…何も言えなかった。
「…可那子?聞いてんのか?」
照れくさそうな表情を浮かべた恋次が、可那子の顔を覗き込む。
「副…隊長…」
その恋次の瞳には、真っ赤な顔をした可那子が映る。
そんな可那子を見た恋次は安心したように表情を緩め、
「いいか、返事は…“はい”か“YES”だ」
と、いたずらっぽく笑って見せる。
「…!」
その言葉に可那子は一瞬驚いたように目を見開き、やがて
「…、YES…」
小さく答え、瞳を閉じた。