車の中で
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事件の真相の一部始終を撮影したスマートフォンを八神に託した直後、杉浦は糸が切れるようにその意識を手離した。
「杉浦!」
「杉浦!?」
「文也っ!!」
そこに混ざる、ここにはいなかったはずの人物の声。
「可那子ちゃん!?なんでここに…」
その声の正体に気付いた海藤が驚きの声を上げる。
そこにいたのは、杉浦の恋人である可那子だった。
杉浦たちが裁判所を飛び出し神室町に向かったところまでは分かっていたが、そこからの動きが分からなかった。
しかし神室町の雰囲気から異変を感じ取り、バイクでパトカーにくっついて創薬センターに乗り込んで来たのだった。
「文也…!文也しっかりして…!」
真っ青な顔でぐったりと力なく八神に抱えられる杉浦に駆け寄り、声をかける。
すぐに警官も駆け寄り、センター内の病院は機能していないこと、そして救急車到着まで時間がかかる可能性がある為、パトカーに乗せてここを出て救急車にバトンタッチすると話した。
「あたしも一緒に行かせてください!」
可那子も杉浦を支えるように立ち上がり、八神を見る。
「八神さん、バイクお願いしてもいい?」
「まかせろ。杉浦頼むな」
八神が二つ返事で返すと、可那子は強く頷いてバイクのキーを放った。
「文也…」
膝に乗せられた杉浦の頭をなでながら、額に浮かぶ脂汗をそっと拭ってやる。
「お願い、死なないで…」
「大丈夫…まだ、死ねないよ…」
顔をしかめながらも可那子の手に触れ弱々しくも笑顔もつくって見せる。
可那子が少し安堵したその時、ふと何かを思い出したように杉浦があ、でも…と呟いた。
「キス、してくれたらもっと元気出るかも…」
「え!?」
可那子が焦った声を上げ慌てて運転席の方に目を向けると、そちらからは明らかに何も聞いてませんよ、な雰囲気が伝わってくる。
やっぱり聞こえてたのかと残念に思いながら観念しつつ杉浦の方に向き直ると、絶対?と確かめる。
絶対、万が一のことにはならないかという確認。
だからといって本当に絶対なんてないと分かってはいたけれど。
それでも少し貧血を起こしているのか血の気のひいた唇の端を上げ、杉浦は「…うん、絶対」と笑ってみせる。
「約束、だからね?」
可那子は小さくそう言って、もう一度うん、と呟く唇にそっと口づけた。
その後杉浦は病院で手術を受け、しばらくの入院生活は免れそうにないがそれでも後は回復を待つばかりとなった。
しかし車内でのことを運転していた警官から泉田→真冬→八神→海藤&東へと伝わり長いことからかわれ続けることになるとは、その時のふたりには知るよしもなかったのだった。
車の中で
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