初めての恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次に学校へ行った時、可那子はもういなかった。
父親の転勤で急に転校してしまったこと、突然のことでみんな驚いていることを、可那子と同じクラスだったジャッカルが話してくれた。
ああそういう話になっているのかと思いつつ、卒業してからのはずがこんなに早まったことに戸惑い、本当に誰にも何も言わずに行ってしまったんだなと思ったら…また涙が出そうだった。
たった一人で運命に立ち向かうと決めた可那子。
だから偶然知ってしまった真実を俺も誰にも話すことはない。
だけど信じることはやめたくないし、だから可那子に対する俺の想いは…彼女が自然と俺の中からいなくなるまで待とうと思った。
「ごめんな、俺…好きな人いるんだ。だから、気持ちには応えてやれない。…でも、ありがとな」
昼休み、部室裏。
顔を真っ赤にしながら精一杯の気持ちを俺に伝えてくれた目の前の後輩に、俺も自分の気持ちをちゃんと伝えた。
すると
「やっぱりセンパイ、以前よりずっと優しい…きっとその人のおかげ、なんですね」
意外な言葉を返され、少し戸惑う。
「やっぱり?」
「はい、最近噂になってるんです。丸井センパイ、雰囲気優しくなったよねって」
問いかけた俺にその子はそう教えてくれて、
「あたし、センパイのこと好きになってよかったです。ありがとうございました!」
言葉がうまく紡げなかった俺にぺこりと頭を下げ、駆けて行ってしまった。
俺を見ていた潤んだ瞳。
一人になって泣いているんだろうか。
少し前の自分と重なって、胸が苦しくなる。
だからといって気持ちのない相手を受け入れることはできないけど…好きだと想う気持ち、そのあったかさを今の俺は知ってる。
相手の気持ちが分かるぶん優しくできるようになったのは――
そうだな、やっぱり可那子のおかげなんだろうな。
「…さんきゅ」
全てを包み込むように広がる青空に向かって、俺は小さく呟いた。
→ Five years later...