あの日と同じキスを
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「お前さんは、まだまだ恋に恋しとるんじゃな」
仁王があたしの頭をなでながら笑う。
恋を失った翌日。
屋上で落ち込んでいたあたしに声をかけてきたのは、同じクラスのサボリ魔、仁王雅治だった。
仁王とは同じクラスとはいってもそれほど仲がいいわけでもなく、話をすることもほとんどなかった。
それなのに、あたしはその仁王相手に自分がどんな風に恋をしてそれを失ったかを話していた。
何故かは分からないけど、仁王の隣がとても心地よかったから、だと思う。
「何それ、仁王にあたしの何が分かんのよっ!」
だけど仁王の口から発せられた言葉にカチンときたあたしは、そんな仁王に噛みつく。
それでも仁王は飄々と言ってのけた。
「色々分かるぜよ。同じクラスになった時からずっと、お前さんだけを見てきたんじゃから」
「…え?」
戸惑うあたしをよそに、仁王は淡々と続ける。
「お前さんは知らんぜよ。俺がどれだけお前さんを愛しとるかってことをの」
気付いたら、あたしは仁王に抱きしめられてた。
「俺にしときんしゃい、可那子」
「仁王…?」
「雅治、じゃ」
「まさ、は…」
最後まで呼ばないうちに、唇をふさがれた。
優しい、優しいキス。
何度も何度も、啄むように。
「…っ、は…」
ふと唇に舌が触れて、あたしは息を吐き出す。
同時に仁王の…雅治の舌がするりと入り込んできた。
歯列をなぞり、舌を絡め、ふたりの唾液が混ざり合う。
「…っふ、は…ぁ…」
無意識に声が漏れる。
膝に力が入らない。
知らなかった。
キスがこんなに気持ちいいなんて。
あたしは雅治の制服の背中をぎゅっと握りしめた。
「気持ちええじゃろ」
すると雅治は唇を離してそう言うと、ふわりと笑う。
「これが本物のキスじゃ」
そしてもう一度、今度は触れるだけの優しいキスをくれた雅治は
「俺にしときんしゃい、可那子…」
あたしの耳もとで同じ言葉を繰り返した。
「好きやよ、可那子…。もうどうすることもできんほどに、お前さんだけを愛しとるんじゃ」
そう言った後雅治は、重いか…と自嘲気味に笑う。
…まだ、分からない。
今まで雅治のこと、そんな風に考えたことなかったから。
でも、でも…あたしも、雅治のこと、好きになりたい!
そう言ったあたしを一瞬驚いたように見た雅治は、だけどその後またふわりと笑ってもう一度あたしを抱きしめた。
雅治は、あたしの体だけじゃなくて心まで全部抱きしめてくれる…そんな風に感じさせてくれる。
優しく強く、あたしの全てを。
だからこの気持ちはきっと、間違ってない。
雅治の胸に包まれながらあたしは…きっとあたしは雅治を好きになると、根拠なんてないけどそう確信していた。
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