教師と生徒じゃなくなる日
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翌朝目覚めた九影は、昨晩と変わらず腕の中で寝息を立てる可那子をしばらく愛おしそうに見つめた後、静かにベッドを下りた。
ホットミルクを手に寝室に戻りベッドの端に腰掛けると、可那子が小さく声をもらす。
薄らと目を開けはしてもまだ寝ぼけたままの様子で可那子は、自分を包む布団をぎゅうと抱きしめた。
「せん、せ…」
九影の匂いを確かめるようにそこに顔を埋め、幸せそうな笑みを浮かべる。
さすがに気恥ずかしくなりながら九影は、可那子の髪を頬をそっとなでた。
小さく名前を呼ぶと、可那子はすぐに目を覚ました。
「先生…」
「大丈夫か?悪かったな、ちっと無理させすぎた」
「っ、ううん…」
九影の言葉で昨夜のことを思い出した可那子は、恥ずかしそうに頬を染める。
そんな可那子を九影は目を細めて愛おしそうに見つめ、その前髪を優しく梳いた。
「あ…いい匂いがする」
直後、可那子はふわりと鼻孔をくすぐるミルクの香りに気付き、照れくささをごまかすように体を起こそうとした。
「っ、いたた…」
しかしその瞬間、体が軋むようなひどい気怠さを感じ声をもらす。
「やっぱツラいんだろ、無理すんな」
「でも…」
「後であっためなおしてやっから」
「、…うん」
思ったより体がつらかったのもあるが、それより何より自分が今何も身に付けていないことに気付いた可那子は、大人しく体の力を抜き布団を顎まで引き上げた。
「ねえ、先生?」
可那子が九影を呼ぶ。
「夢じゃ、ないんだよね…」
その瞳がわずかに、不安そうに揺れた。
「これからもずっと…あたし、先生のそばにいていいんだよね…?」
「ああ、絶対離してやんねえから…覚悟しとけ」
九影は一瞬見開いた目をすぐに細めると、そう言ってにかっと笑う。
「よかったあ…」
その言葉は可那子の不安などひと息に吹き飛ばした。
嬉しくて幸せで、泣きそうになる。
4月に好きになって10月にふられた、諦めるという選択肢しかなかった恋。
けれどどうしても、好きをやめられなかった恋。
最後の最後にもらうはずだった思い出は、思い出なんかじゃない素敵なサプライズだった。
まさにそれは、青天の霹靂。
初めは信じられなかったけれど、今なら素直に感じることができる。
自分の想いに重なる、九影の気持ちを。
「先生…」
可那子は九影に向かって手を差し伸べた。
九影はそれに応えるように身を屈め、しかし抱きしめることはせず可那子の両脇に手をついて可那子を見下ろす。
「せん、せ…?」
「もう先生じゃ…ねえだろ?」
「っ、…」
もっともな指摘をされた可那子は恥ずかしそうに目をそらすが、
「…可那子」
優しく呼ばれ頬を撫でられて、もう一度真っ直ぐ九影を見上げた。
「愛してるぜ、可那子」
可那子の緊張をほぐすように、九影が先に口を開いた。
もう一度差し伸べられた可那子の手に、今度はしっかりと応えてくれる。
「あたしも愛してる――、太郎さん…」
可那子の腕も九影の体に回され、二人の体は静かに重なる。
その重みを受け止めるように、ベッドが小さく――軋んだ。
(15,7,20)
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