教師と生徒じゃなくなる日
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好きになったのは、入学式の時だった。
いわゆる一目惚れで、それからずっと彼だけを想い続けた。
ふられたのは、10月だった。
彼の誕生日に告白して、予想通りの言葉で見事玉砕した。
だからと言ってそう簡単に諦められるはずもない。
それから2年半弱。
卒業生を示すリボンを胸に付けた蔵本可那子は、最後の望みを携えてそこに立っていた。
「…九影先生」
その背中に向かって、最後になるかもしれない名前を呼ぶ。
九影太郎にとってその声は、自分が告白を受けそして教師と生徒だからという理由でふった相手のものだと振り返らなくても分かっていた。
「おう、どうした蔵本。もうすぐ式始まっちまうぞ」
言いながら振り返った九影を見上げた可那子は、単刀直入にそれを告げた。
「あたしやっぱり、どうしても先生が好き」
「…っ、蔵本それは」
「でも諦めるから、これで最後だから。今日だけでいいの…卒業式が終わったら、先生の時間…あたしにくれませんか…?」
何か言いかけた九影を遮るようにしてひと息に言い切った可那子は、まっすぐな瞳を九影に向けた。
「――…、」
もう一度何かを言いかけて九影は口をつぐむ。
「先生…」
YESにしろNOにしろ、返事をもらえないと動けない。
縋るように見つめる可那子に九影は小さく、分かった、と答えた。
「っ、ありがと…」
心の底から安心したように笑みをこぼした可那子は、
「じゃあ夕方6時、中庭で」
短くそれだけ言うと、式の行われるホールへとかけ出した。
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