運命
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それから10年の月日が過ぎた。
逢えるのは年に数日だったが、お互いそれだけで十分だった。
しかし可那子にはそれとは別に憂いていることがあった。
それは、流れる時間。
白哉と出逢った時16歳だった可那子は、26歳になっていた。
ゆっくりと時間の流れる白哉は、出逢った頃と変わらない。
その逃れられない現実だけがつらかった。
「どうした?可那子…浮かない顔をしているな」
白哉の指先が可那子の頬を滑る。
「白哉…」
可那子はその手をきゅっと握り…そして呟く。
「私を、殺して」
その言葉に白哉は目を見開いた。
「…何を言っている」
低めの声が更に少し低くなる。
俯いた可那子は悲しげに言葉を紡ぐ。
「今はまだいい。けど、これからどんどん年を重ねて醜くなっていく私をあなたには見せたくないの…」
「馬鹿なことを…!そんなことは関係ない。それに…」
白哉は可那子を強く抱きしめた。
「そなたに手をかけるなど出来るわけがないだろう…!」
抱き合うふたりの中には、出逢ってから初めて抱く感情が渦巻いていた。
私が、人間じゃなかったら…
私が、死神じゃなかったら――…
それは望んでも望んでもどうすることもできない…哀しい願いだった。
そして運命は、残酷にふたりを引き裂く。
ひと月後現世を訪れた白哉に突きつけられた、非情な現実。
半月前、可那子は事故に遭いこの世を去っていた。
半月の間白哉を求め彷徨っていた可那子の魂魄は、つい先日その街を担当している死神に魂葬されてしまっていた。
足の先から冷たくなっていく…初めての感覚。
なにより大切なものを失い…そしておそらくは二度と逢えない…恐怖。
東西南北4つの地域にそれぞれ80の地区。
魂葬された魂魄は、魂葬した死神にすらも流魂街のどの地区に送られるか分からない。
それでも白哉は一縷の望みにかけて可那子を捜した。
隊長としての責務、朽木家当主としての役割を果たしつつ、時間を見つけては捜し歩いた。
そして全ての地区を回り結局可那子を見つけられなかった時白哉は、時間をかけすぎたことを悔いた。
――転生。
絶望的なその言葉は、白哉を容赦なく打ちのめした。