運命
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あなた…誰?どうしてそんな格好をしているの?」
現世視察の途中、緑の美しさに目を奪われ立ち寄った公園。
不意に声をかけられたことに驚き白哉はその主を見る。
そして目が合ったことで、その問いが確実に自分に向けられていることを理解した。
「…私が見えるのか」
「…どういう意味?」
声の主は年の頃15、6の少女だった。
白哉に問いを問いで返されても不快な様子は見せず、しかし更に問いを重ねる。
「……」
白哉は目の前の人間をじっと見つめた。
「あ、ごめんなさい」
その時少女は何かに気付き、謝罪の言葉を口にした。
そして続ける。
「人に名前を訊くときはまず自分からよね。あたしは蔵本可那子、16歳よ」
そういう問題ではないと思う白哉だったが、礼儀を弁え自ら名乗った少女―可那子―の笑顔に促されるように口を開いた。
「朽木白哉。私は――死神だ」
「死神!?」
間髪入れずに訊き返した可那子の声にはっとした白哉は、
「すまぬ、忘れてくれ」
と、踵を返し一歩足を踏み出した。
「あ、待っ…」
可那子の言葉が終わる前に、そして白哉の踏み出した足が地面に着く前に、死覇装を纏ったその姿は可那子の前から掻き消えていた。
「朽木、白哉さん…」
突然目の前に現れ、自分は死神だと言った美しい男の人。
見えるのか、と訊いたということは他の人には見えないということ?
そんなに霊感強くないと思うんだけど…お化け、みたいなものなのかな?
でも全然怖くなかった、…?
そこまで考えた時、可那子はふと疑問に思う。
どうしたんだろう、あたし…白哉さんのことが、頭から離れないよ…。
もう一度逢える可能性などきっとゼロに近い。
それでも可那子は次の日からも、毎日公園に通った。
もしかしたら…という、かすかな希望を胸に。
「それから、流魂街西区のホロウ出現の件ですが…って、隊長?聞いてます?」
「あ…ああ、すまぬ続けてくれ」
隊務の報告をする恋次に問いかけられ、はっと我に返った白哉は報告の続きを促した。
「珍しいっすね、隊長がぼんやりするなんて。じゃあ西区の件から――…」
意外そうに言い、再度報告書に目を落とした恋次の言葉を、白哉はやはり上の空で聞いていた。
…どうかしている。
これほどまでに心奪われるとは…。
白哉の思考回路は白哉自身が戸惑うほどに、つい先日偶然出逢った少女に支配されていたのだった。
そしてふた月後現世に赴いた時、白哉の足はごく自然にあの公園…可那子のもとへ向かっていた。
馬鹿げている。
約束など交わしていないのだからいるはずがないだろうと思いながらも、瞬歩はスピードを増す。
「……」
そして白哉は公園の上空で足を止めた。
まさか、という想いで見下ろしたそこにいたのは、紛れもなく可那子だった。
とその時、何かに気付いたようにあたりをきょろきょろ見回した可那子は、直後弾かれたように空を見上げた。
目が合った瞬間、白哉の体はそこから掻き消え…次の瞬間ふたりは腕を伸ばせば届く位置で対峙していた。
白哉が死神だと(おそらく人間ではないと)いうことも、宙に浮かんでいるように見えたことも、一瞬で空間を移動できるということも、可那子にとってはどうでもいいことだった。
一度逢っただけの…それもものの数分顔を合わせただけの相手だということも、もちろんどうでもいいことだった。
そしてそれは白哉にとっても同じことで、自問を繰り返すことに意味はないと既に理解していた。
「また…逢えたね」
「…ああ」
「逢いた、かった…」
「私もだ――…」
どちらからともなく抱き合う。
惹かれ合う理由など知らない。
どうしようもなく愛してしまっただけ。
ただ、それだけだった。