峯義孝⑦
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「峯先輩は、ホワイトデーのお返し用意したんですか?」
「いえ、切りがないので1年の時からお返しは一切していません。でも今年はひとつだけ用意しようと思ってます。…本命の方からいただいたので」
「え。あ、そう、なんですか…」
俺の答えを聞いた彼女の、隠しているけど隠しきれていない動揺は見ないふりをする。
それでも僅かに上がってしまう口角に彼女が気付かないことを祈りながら。
そしてホワイトデー当日。
「チョコレートありがとうございました。これ、ホワイトデーのお返しです」
「え!?チョコって…なんで知ってるんですか!?」
「すみません、あれは俺の作り話です。置き場に困ってあそこに置いておいただけなんですよ」
「…っ、でも先輩、お返しはしないって…」
「その話には続きがありませんでしたか?」
「ありましたけど――…じゃあ、じゃあ先輩の本命って…」
差し出したお返しの品を目の前に、そう呟いた彼女はフリーズしてしまう。
そんな彼女が可愛くて笑みがこぼれてしまうのをそのままに、俺は訊いた。
「受け取ってはもらえませんか?」
「っあ、ありがとうございます…っ!」
ぎこちなく差し出される手に無事にそれが収まるのを見届けてから、俺はひとつ突っ込みを入れる。
「そもそもこの部屋には鍵がかかってますよね。その鍵を持っているのは俺たちふたりなのに」
途端に彼女はそういえば!という顔で俺を見上げた。
「…確かに鍵、開けました…。先輩にチョコを渡すことを考えるだけで精一杯で…、」
しかしその後すぐにその顔を俯かせて小さく呟く。
「でもほんとに夢みたいです、どうしよう…」
「そうですか、では…」
「み、峯先輩…っ!?」
「これで夢ではないと信じてもらえますか?」
だから俺はそんな彼女をそっと抱き寄せ、耳もとで小さく名前を呼んでみる。
「…大好きですよ」
「ああああたしも峯先輩が大好きです…っ!」
すると既にいっぱいいっぱいであろう彼女は、真っ赤になりながらそれでもしっかりと応えてくれた。
そんな律儀で真っ直ぐなところにもきっと俺は惹かれていたんだと思う。
彼女の全てが本当に可愛くて愛しくて、俺は少しだけ欲を出し、その額にそっとキスをした。
(16,3,3)
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