その時が来るまで
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「時間は…一樹くんは大丈夫ですか?」
世良が訊くと、その胸に背中を預けていた可那子が静かに答える。
「今日は大吾のうちにお泊まりだと言ったら、喜んで出かけて行きました…。すみません、今夜だけは、最低な母親でいさせてください…」
「いや、そうさせたのは俺ですし…それに俺はあなたを帰さなくていいと安心している最低な男ですから、謝らないでください」
抱きしめる腕に少し力をこめて世良がそう返すと、可那子は小さく小さく息を吐いた。
「俺は、あなたを愛しています」
ふたりを包んだ沈黙を世良が取り払った。
「あなたは俺を…愛してくれていますか…?」
「はい、…愛して、います…」
お互いの気持ちなどとうに体から伝わっていたが、敢えて世良は問い、可那子もそれに答えた。
「阿波野を、愛していますか?」
「、はい…」
「俺に抱かれたことを、後悔していますか?」
「、…っ!」
阿波野のことについては嘘をつく必要もなく可那子は小さく、しかししっかりと肯定するが、続いた質問には強く首を振った。
「では阿波野に…罪悪感を、感じますか?」
世良は更に問いを重ねる。
「…、分か、りません…、ごめんなさい…」
これには少し困ったように可那子がうつむくと、
「いやすみません、これは意地の悪い質問でしたね」
しかし世良も答えが分かっていたという様子ですぐに謝り、そしてゆっくりと可那子の体を自分に向き合わせた。
「罪悪感や他の様々な感情に押し潰されそうになったら…つらかったら必ず言ってください。あなたを苦しめてまで、俺はあなたのそばにはいられませんから」
世良からゆっくりと紡がれる言葉に、可那子は泣き出しそうな表情で首を振った。
世良は優しく笑み、これが最後の質問です、と続ける。
「ですがその時が来るまでは――俺と共に、生きてくれませんか…?」
そして、はい、とうなずく可那子を、その胸に包み込んだ。
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