その時が来るまで
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大吾の言った案外シンプルな答えは、可那子の中に既に存在していた。
世良の気持ちを知ってなお、気にしないでくれという世良の厚意に甘えてこの別荘を訪れていたこともその気持ちの表れだったのだと今なら素直に認められた。
その答えが本当に自分の気持ちなのかを確かめるために、可那子は世良に会いに行くことを決める。
しかしこの時既に東城会の三代目会長となっていた世良においそれと連絡をすることもできず、可那子は大吾にその仲介を頼んだ。
「伝えて大吾、できればふたりきりでお会いできませんか、って…」
そう言った後、それから、と言いづらそうに口ごもる。
「大丈夫、一樹は俺が預かる」
察した大吾が答えると、可那子は自嘲気味に笑った。
「ごめん、…ひどい母親」
しかしその言葉を大吾は一蹴した。
「んなことねえよ。叔父貴がいなくなって一樹のこと以外考えたことなかったろ?一度くらい自分のこと考えてもバチ当たんねえよ」
大吾の言葉にも背中を押され、可那子は世良のマンションへと向かった。
チャイムを鳴らすとしばらくしてドアが開かれ、そこに立つ世良の姿にトクン、と心臓が高鳴った。
「わざわざ足を運んでもらってすみません、どうぞ」
別荘での一件には触れず、世良はそう言ってスリッパを用意した。
それに促され玄関に足を踏み入れる可那子だったが、しかし可那子が動けたのはそこまでだった。
会って確かめようと思っていた想いが、世良の顔を見ただけで堰を切ったようにあふれ出して止められなかった。
「可那子さん…?」
「すみませ、わざわざお時間取って、いただいたのに…」
涙が勝手にこぼれ落ちる。
世良が遠慮がちに可那子に近付き、そっと手を伸ばした。
涙を拭いながら、訊く。
「この涙の理由に…、俺は期待してもいいのでしょうか…?」
「――…っ、」
世良を見上げる可那子の瞳からは、更に涙があふれ出した。
「世良、さ…」
「…っ!!」
それ以上抑えることは、世良にはできなかった。
目の前の体を強く抱き寄せ、そして抱きしめる。
「すみません、本当に…っ」
可那子の体をかき抱きながら苦しげに声を絞り出す世良。
「…ないで、ください…」
しかし世良の胸で泣きじゃくりながら、可那子は必死に首を振った。
「お願、です…、謝らないで…っ」
可那子は伸ばした腕を世良の首に回した。
そのまま唇を世良のそれに重ねると、同時に世良もそれに応える。
息をすることも忘れるほどに、ふたりはお互いの唇を貪り合った。
何度も角度を変えながら舌を絡め歯列をなぞると、唇の端からどちらのものか分からなくなった唾液がこぼれ落ちる。
世良は可那子の体をドアに押しつけ、更にその唇を貪った。
同時に可那子の服の裾から滑り込ませた手で背中のブラのホックを外す。
「…っ、ふ、あぁ…っ!」
服をずり上げ露わになったふくらみに世良は唇を寄せ、可那子はその世良の頭を抱きしめて声を上げた。
「世良、さん…っ、」
このままここで抱かれても構わなかった。
ただ世良と繋がりたかった。
それほどまでに、可那子は世良を欲していた。
そして世良も、自身を止めることはできなかった。
決して手に入ることはないと思っていた存在が今自分の腕の中にいるという信じられない幸福に、気分は否応なく高揚し理性を奪っていく。
世良はそのままその場所で可那子を抱いた。
その後達して頽れそうになる体を抱き上げ、寝室へと場所を移す。
そこでまた何度も求め合うふたりの間に言葉など存在せず、発せられる声はあえぎ声のみ。
与えられる快感に抗わず可那子は何度も昂められ、そのたびにこぼれる甘い蜜液を世良は存分に味わうのだった――。